景気の悪化に、相次ぐ物価上昇。将来への不安が募るいま、貯金をするだけではなく、お金を育てることにも、関心が高まっている。大切な資産を守っていくために、そして、20年、30年後も幸せであるために、あらためて、お金について考えてみよう。
パックン、なぜお金を育てることは大切なんでしょう?
自分の可能性をより広げる
パックン流・お金の考え方
お金は、生きるために欠かせないもの。だけど、お金ってなんだか難しいし、わからないことも多いし、かといって親しい人ともなかなか話しにくい。アメリカで生まれ育ったパトリック・ハーランさんは、その原因に国民性が大きく関係していると話す。
「日本では、『お金は汚いもの、いやらしいもの』という考え方が根付いているような気がします。お金について学ぶ機会が少なかったり、友達とお金の話がしにくかったりするのは、そうしたイメージが関係しているからではないでしょうか。お金はいやらしいものでも美しいものでもなく、幸せになるための道具に過ぎません。いまよりももっと豊かであるために、上手なお金との付き合い方を知り、いかしていってほしいです」
幼少期の生活は、決して裕福なものではなかったというパトリックさん。家計に悩む母の姿を見て、お金に縛られない自由な人生を手に入れるために、資産形成について考えるようになったという。
「ブランド品や高級車に興味はないけれど、家族でたくさん旅行に行きたい。子供がやりたいと思うことにチャレンジさせてあげたい。もう少し年齢を重ねたら、仕事を減らして習いごとをしたいと思うようになるかもしれません。そうしたときに、お金がないことを理由に諦めることのないようにしたいんです。幸福へのツールとして、より喜びを感じられるものに使えるだけのお金をつくるために、資産形成が大切なのだと思います」
パトリックさんは、意識を変えることが大切だと続ける。「お金にすごく詳しくなる必要はありません。大事なのは、お金に対する意識を変えること。自分の将来を幸せにするものだという考えにシフトすれば、おのずと資産形成はできるようになるはずです」。よりよい未来のために、まずは意識を変えることから。お金について周囲の人と話し、情報共有することから、はじめてみてはどうだろう。
パトリック・ハーランさん
1970年11月14日生まれ。アメリカ・コロラド州出身。1993年にハーバード大学比較宗教学部を卒業後、同年に来日。1997年、吉田眞さんとお笑いコンビ「パックンマックン」を結成し、NHK「英語でしゃべらナイト」や「爆笑オンエアバトル」など多くのテレビ番組に出演する。豊富な知識をいかして、TBS「報道1930」のコメンテーターや東京工業大学の非常勤講師としても活躍。昨年11月、著書『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)を出版。
『パックン式 お金の育て方』
著者:パトリック・ハーラン
朝日新聞出版
Q1
日本とアメリカではなぜお金の考え方が違うの?
A
アメリカでは高校生からバイトを始めて、銀行口座を開いたり家計簿のつけ方を学び、18歳になったら親元を離れることが一般的です。しっかりと稼いで自立している人が評価されるため、学校の金融教育も充実しています。日本ではそうしたシビアな評価はないし、終身雇用もあって保険も充実している。経済的な安心・安全が保障されているということも、日本に暮らす人がお金のことをあまり話さない理由のひとつかもしれません。
Q2
無駄遣いを減らすにはどうしたらいい?
A
僕のおすすめは、頭の中で「このお金を老後まで取っておけばいくらになるか」を考える“老後計算機”です。アメリカの株式市場はおよそ年間7%の利回りを見込めるため、浪費分を72の法則(※)で計算すると、お茶代の200円が、50年後には32倍、つまり6400円に膨らみます。お茶に6400円も払おうとしていると思うと、我慢したくなるのではないでしょうか。小さな額でも、時間が経つと良くも悪くも膨らんでいくものです…。
※資産運用において、元本を2倍にする場合のおおよその年数が簡単に求められる法則のこと。「72÷金利≒お金が2倍になる期間」となる。パックンの説明の通り、たとえば金利7%であれば、200円はおよそ10年で倍の400円に。10年ごとに倍増すると想定すると、2倍(10年後)→4倍(20年後)→8倍(30年後)→16倍(40年後)と増えて、50年後には32倍の6400円になってしまうということ。
Q3
お金はどうやって増やせばいい?
A
収入には、働いて手に入れるアクティブインカム(労働収入)と、株式や不動産といった資産や権利を保有することで入ってくるパッシブインカム(不労収入)の2種類があります。働かずとも収入が入るパッシブインカムは魅力的ですが、まずは投資に踏み出すための「お金の元」を手に入れることが大切です。収入の土台をつくり、賢く振り分けて無理のない額を投資に回せば、着実に、お金を育てることができると思います。
Q4
パッシブインカムを手に入れたい!コツは?
A
リスク(危険性)とリターン(利率)は比例するものである、ということを踏まえたうえで、“ミディアムリスク・ミディアムリターン”な投資をおすすめしています。資産すべてを銀行に預けるのは安心だけど金利が限りなくゼロに近いし、賭けのような投資は一発逆転の可能性があるけれどそのぶんリスクも高い。無理なくパッシブインカムを増やす方法で始めてみましょう。その具体的な方法は、僕の著書を読んでみてくださいね!