チョコレートの原料であるカカオから持続可能な社会を考える「日本サステナブルカカオ協会」が7月7日、京都産業大学(京都市北区)で「第1回サステナブルカカオ会議」を開催した。
チョコレートの原料として、年々生産量と消費量が増えているカカオ産業をめぐっては、森林の伐採や焼き畑による森林破壊や、貧しい地域の子供が栽培に従事する児童労働などの社会課題を抱えている。同協会はそうした課題を認識し、解決に向けた行動を起こしていこうと、株式会社 明治(東京都中央区)によって今年2月14日に設立された。カカオ生産国であるドミニカ共和国などの大使館や大学と連携し、活動を広げていくことを目的としている。
中でも将来を支える若い世代にこの問題を共有し、社会を変えるムーブメントを起こしてもらいたいと、グリーライフスタイルの江川嗣政社長の紹介で、京都産業大学での会議開催が企画された。


当日は、同大の経営学部、現代社会学部、生命科学部など、学部を超えた学生約110人が参加。黒坂光(あきら)学長の挨拶に続き、明治カカオマーケティング部に所属する入社4年目の蓜島(はいしま)里菜さん(26歳)が講義を行った。

蓜島さんはまず、カカオがどこで育てられ、どのように日本に運ばれてくるかを解説。カカオ産業が抱える課題に、チョコレート業界がどのような対応をしているかを説明した。例えば、明治社員が直接カカオ産地に行き、カカオ農家の暮らしの向上のために、生産性や収益面でのサポートに取り組んでいく「メイジ・カカオ・サポート」。子供たちにカカオの絵を描いてもらう 授業では、美術の授業を受けたことがなかった子供たちが初めての経験に目を輝かせながら作品を仕上げたことが紹介された。
同社が進めているのは、カカオそのものの価値をあげていく「ひらけ、カカオ。」プロジェクト。カカオの実のうち、チョコレートの原料として使われるのは約30%のみで、それ以外の種皮(カカオハスク)は飼料や肥料となっていたが、プロジェクトでは、カカオをさらに有効活用する方法を模索。食品にとどまらず、床材や寝具の染料などのインテリアにカカオハスクを利用して新たな製品に生まれ変わらせるブランド「CACAO STYLE」を提唱する。

とはいえ、カカオの社会課題は一企業だけで解決できる問題ではない。メーカーだけでなく、チョコレートを購入する人も知る必要があるとして、日本サステナブルカカオ協会は活動の広がりに力を入れる。

学生たちと同じ「Z世代」である蓜島さんは、「SDGsに理解や関心はあるけれど、何をすればいいか分からない人は多いのではないか」と学生に問いかけ、「カカオ産業や社会課題を理解してもらい、カカオをきっかけにサステナブルな未来を考えていきたい。皆さんにも応援していただけるとうれしいです」と若い仲間に期待しながら講義を締めくくった。

続くディスカッションには、会場を代表して4人の学生が参加。蓜島さんの他、カカオハスクで染めたTシャツを着た蓜島さんの上司、明治カカオマーケティング部の木原純さん(45歳)も加わり、協会と連携しながらカカオのサステナビリティの輪を広げていくにはどうしたらいいかを話し合った。
学生からは、「チョコレートが児童労働の問題に関連していることは知っていたが、環境問題にもつながっているのを知れて興味深かった」「チョコは好きではなかったがこんなにたくさんの工程を経て作られていたのかと知って驚いた」などの素直な感想が聞かれた。また、輪を広げる方策として、インスタグラムなどのSNSの活用やイベントへの出展といったアイデアのほか、経済的に余裕がない学生でもサステナビリティに貢献できる方策として、「必要最低限を買う、持っているものを大切にする」などの意見も出た。
第1回会議を終えた蓜島さんは「学生に興味をもってもらえてよかった。伝えたかったことがちゃんと伝わっていた」と手ごたえを感じた様子。「未来の消費を担うZ世代が、ただ安いものを求めるのではなく、産業のことを考えて消費行動を変えていくきっかけになれたら」と願いを語った。

日本サステナブルカカオ協会では、活動の一環として、ソーシャルメディアマーケティング事業を手がけるグリーライフスタイルと協働し、大学生とともにカカオ豆を取り巻く社会課題とサステナビリティについて考える企画「サステナブルカカオ会議」をスタートした。
日本サステナブルカカオ協会
https://www.sustainable-cacao-assoc.jp/