text=MOMOKO YAMAMOTO photography=SHIGEO KOSAKA

vol.13 寺川 綾(元水泳選手)[観る・聴く・読む・考える 光が紡ぐ言葉]


 映画、音楽、演劇、小説にアニメーション……日々新しい文化芸術が生まれる街で、そのつくり手たちは、どんなことを考えているのだろうか。今回は元競泳日本代表で、現在はアスリートが安心して競技に専念できる社会を目指すプロジェクト『RESPECTion!』の推進委員を務める寺川綾さん(所属・ミズノ株式会社)にお話を伺った。


 2012年ロンドン五輪で100メートル背泳ぎと400メートルメドレーリレーで銅メダルを獲得した寺川綾さんが、26年3月に発足したプロジェクト『RESPECTion!』の推進委員に名を連ねた。同プロジェクトはアスリートがより尊厳を受けられる環境を育てることを目指している。

 「スポーツだけではなく社会全体に広がっていくようにと話し合っています。皆さんいろんな経験をされているので、そういう意見を集約してこれから少しずつ広めていけるというところにすごくやりがいを感じています」

 原点にあるのが、自身の現役時代の経験。競技会場で赤外線カメラによる盗撮行為を見受けたこともあり「選手自身が自分たちを守るには限界がある」と頭を悩ませる。SNSでの誹謗中傷や指導者によるパワーハラスメントなど、選手を傷つける出来事は大きな社会問題となっている。

 「(選手と指導者も)信頼関係が大事だと思う。それがないとただの威圧でしかなくなってしまう。お互いの立場を思いやってリスペクトし合うことが本来の姿。立場を理解して認め合って取り組めるといいと思います」

 現在はスポーツキャスターの他、日本水泳連盟広報委員会やJOCオリンピックムーブメント事業専門部会に所属し、選手の環境向上や競技の普及に向けた活動にも力を入れている。多忙な日々の中、気分転換は海へ出かけることだ。

 「普段携帯を持ち歩いていて『連絡が来たら返さなきゃ』と思ってしまうので、そういうのを一旦ストップするために海に入ってサーフィンをしたり。海の中には携帯を持っていかないので、その時間だけは何も考えずに、という時間が好きですね」

 1年ほど前から始めたゴルフも、リフレッシュにつながっているという。「うまく飛ぶことは少ないんですけど、あの広々とした空間と、外に出てのびのびとみんなで話しながらできるのが楽しいですね」と笑顔だ。

 挑戦は続いていく。『RESPECTion!』推進委員としての時間は、普段はあまり関わりがない弁護士や他競技の選手から学びを得る機会になっているそう。

 「みんなが気持ちよく生活できるように、スポーツの世界も社会で働かれている皆さんも、日頃の生活でもお仕事でもお互いを思いやりながら『リスペクト』を持って暮らせる社会を一緒につくり上げていければと思います」

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(寺川 綾)1984(昭和59)年11月12日生まれ。大阪市出身。3歳で水泳を始める。近大付高、近大を経てミズノ株式会社に所属。2004年アテネ五輪200メートル背泳ぎで8位。13年の世界選手権50メートル背泳ぎ、100メートル背泳ぎで銅メダル。同年に現役引退。50メートル、100メートル背泳ぎの日本記録保持者。現在はミズノスイムチームのコーチ。


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RESPECTion! とは

 誹謗中傷やハラスメントといった「マイナスをゼロに」することと、応援の力で選手とファンを繋ぎ、共に「プラスをつくる」ことを目指すプロジェクト。アスリートはもちろん、すべての人が正当に評価され、RESPECTを自然に受け取れる未来をスポーツ界から社会全体へ育てていく。青学大陸上競技部長距離監督の原晋氏と、早大スポーツ科学学術員教授で弁護士の松本泰介氏が共同代表を務める。推進委員に柔道元日本代表の谷本歩実氏ほか。





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