着物で移動していると、「いいですね、着物。好きなんですが、着る機会がなくて」と声をかけていただくことがあります。着物に憧れを抱く女性は多いものの、晴れ着で初仕事に行くなどということもめっきりなくなり、確かに着物を着る機会は減りました。着物に詳しい人が少なくなって、道具をそろえたり、着付けが難しいものと感じられることも着物離れの原因だと思います。でもやっぱり、着物姿の女性はとてもきれい。ぜひ、若い女性にこそ着物を着てもらいたいなぁと常々思っています。それも、できれば海外で!
「そんな無理難題を⋮」と思われるかもしれませんが、海外で着物を着るといいことがいっぱい。きちんとしたレストランで食事をしても、着物と洋服では、通される席からサービスまでまるで違ったりします。着物を着ているだけでリスペクトされたり、よいサービスを受けられたり、初めての方との話が弾んだり、現地に住む日本人から声をかけられて旬な情報を教えてもらったり⋮。
私が初めて海外で着物を着たのはネパール、大学生のときでした。着物のおかげで友達ができて、いろんなところへ行きました。仕立て上がり一万円以下の洗える着物でしたが、それでも十分でした。よっぽどでなければ補整はせずに、二部式に分かれている帯であれば、15分あれば着られるもの。着物、帯、肌襦袢、長襦袢、足袋、草履、腰紐一本、伊達締め二本、帯揚げ、帯締め、帯枕、帯板があれば大丈夫。洗える着物なら、シワも汚れも気にせずに済みます。着付けに慣れるには回数がものをいうので、日本でも食事のときなどに着てみて、襟の崩れ、姿勢、ガニ股、裾のはだけに気を配る練習をしてみましょう。着物姿は目立つので、堂々と背筋を伸ばして振る舞うこと。いつもより自然と優雅になって、世の男性からもいつもより少し優しくされる着物の魔力、ぜひ味わってみてください。
千代里(ちより)
エッセイスト。元新橋芸者。初エッセイ『捨てれば入る福ふくそうじ』が好評で講演の依頼が来るようになり、現在は全国を回る日々。ツイッター(@chiyorin_com)でも恋や美についてつぶやいています