文・AYANA 写真・中川正子

トレーニングが自信をくれる(体力の話)[連載エッセイ ゆらめくひかり]


 幼い頃から運動が苦手だった。逆上がりができるまで苦労したし、走るのも泳ぐのもタイムが遅い。団体競技で迷惑をかけるのが嫌で、体育祭はとにかく憂鬱なイベントだった。その後婦人科系の不調や血圧の低さなども加わっていき、いつもフィジカルの力が弱かった。

 とくに悲惨だったのは30代終盤、産後である。そこそこ高齢出産だったことも関係しているかもしれない。腰や背中、肩が痛く、息子が体調を崩せば、もれなく自分も同じ症状になる。常に体力が底辺だった。産後すぐ通った骨盤矯正の整体院で、体力をつけたいと相談したところ「この歳からなにかを始めたところで無駄ですよ」と言われてしまった。もう私の体は手遅れなんだ、この不調を抱えて生きていくしかないんだ、と思った。

 骨盤矯正の効果がよくわからなかったので1年でやめ、代わりに友人の紹介でパーソナル加圧トレーニングを始めた。週に1度30分間、加圧ベルトを手足に巻いてストレッチや運動を行うのだが、これがすごく自分に合っており、不調や体の痛みが明らかに減った。担当のトレーナーに「この歳で体力をつけるのはもう難しいんですよね?」と訊いたら「何を言ってるんですか?もちろんつけられますよ」と朗らかに言われた。すごくうれしかった。加圧トレーニングは今も続けている。

 40代後半になると、座りっぱなしが多い仕事のスタイルに、更年期のサイン、筋肉の衰えや老眼など、産後とはまた異なった要因が重なり、また体調が思わしくなくなった。いつもどこかが痛い、夕方以降の疲れが尋常じゃない、朝すっきりと起きられない、などなど。そこで、もう少し体を動かす習慣をつけなければとキックボクシングを始めた。パーソナルレッスンをプラスするのは金銭的に難しいし、自発的にランニングなど絶対に続かない。たまたま通いやすいところにスタジオがあり、試しに体験レッスンを受けてみたら、できそうだぞ?という気持ちになった。

 いわゆる暗闇系で、音楽にあわせてサンドバッグにパンチとキックを繰り出すというスタイル。格闘技というよりはダンスに近く、クラブやフェスで踊ることになんの抵抗もない人間のため、すんなり馴染んだのだと思う。しかし思い切り体を動かして、全身から汗が吹き出るような動きは、もしかしたら生まれて初めてのことかもしれなかった。最初はへっぴり腰だったが、徐々に可動域が広がり、自覚的に体を動かすことができるようになっていくのも自信になった。そして、始めて3カ月あたりだろうか。明らかに体型に変化が起こり、これまでまったく縁のなかった腹筋がついてきた。もちろん疲れやすさも軽減し、体力もついた。筋肉は加齢を悲観させないものなのだなと、深く実感することとなった。

 運動が苦手だと思っていた学生時代の私に、もう体力をつけるのは無理なんだと絶望していた産後の私に、これまでの人生でいちばん年寄りである今、この場所から伝えたい。自分に合った方法を探せばいい、いつからだって変われるよと。


アヤナ
ビューティライター。化粧品メーカーの企画開発職を経て、35歳でライターとして独立する。培った専門知識にファッションやアート、ウェルネス視点を加えた独自の美容観でビューティを分析し、さまざまなメディアで執筆。近著に『仕事美辞』(2024年双葉社)。「エモ文」文章講座も開講中。最近は、ベスコスを考える日々。

@tw0lipswithfang


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30年以上前から女性の健康とともに歩み、研究開発をつづけてきたロート製薬は、女性ならではのからだの変化・不調に向きあう商品や、正しい知識を発信中。「女性ホルモン」と生きるあなたの、からだだけでなくこころにまで、そして、目に見えるものだけでなくカタチのないものにまで寄り添う存在として、“モンモン”を、“ルンルン”にしていくパートナーを目指しています。

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