19世紀前半のフランスで活躍した画家、テオドール・シャセリオー。同時代のドミニク・アングルやウジェーヌ・ドラクロワといった巨匠に隠れ、日本ではほとんど知られていない。この才気あふれるロマン主義絵画の異才を紹介する初の本格的な展覧会が、東京の国立西洋美術館で開かれている。
シャセリオーの代表作で本展の目玉となっているのが「カバリュス嬢の肖像」だ。白いドレスと頭には古風な花飾り、手には薄紫の花束。憂いがある顔は思慮深く知的で気品が漂う。どこか謎めき、内面さえも表現しているようだ。モデルは有名医師を父に持ち、当時のパリで最も美しい女性の一人に数えられていた。