薬膳で身体をいたわる[お疲れさま、2025年のわたし!]


薬膳で身体をいたわる

 仕事納め、忘年会……。なにかと忙殺される年末年始は、気づかぬうちに身体に負担がかかっているかも。そんなときは、「薬膳」を実践してみては?まずは薬膳のいろはを〈薬日本堂〉の齋藤さんに教えてもらった。都内の薬膳料理が食べられるお店も併せて紹介。


薬膳は「漢方」の一部

 漢方とは、5世紀に中国から日本へ伝わった古代中国医学が日本で独自に発展したものです。漢方薬だけではなく、鍼灸、気功、按摩、薬膳も漢方の一部。そのどれもが「自然のなかでどう過ごしたら健康でいられるか」という理論に基づき体系立てられました。漢方薬の「薬」とは生薬、つまり自然由来のものを指し、漢方薬は生薬を2つ以上組み合わせて作られます。たとえばかぜ薬として有名な葛根湯(カッコントウ)は、葛根(カッコン)、麻黄(マオウ)、桂皮(ケイヒ)など7つの生薬で構成されています。しかし、薬膳の「薬」は生薬とは限りません。季節やそのときの体調に応じた食材を組み合わせ、食事で体調を維持するのが薬膳。身近な食材を組み合わせても作れます。年末年始の慌ただしさで体の変化を感じたら、日々の食事で薬膳を実践してみてください。

metro274_special_02_1.jpg

齋藤友香理さん
薬剤師。大学で薬学を学び、〈薬日本堂〉入社後漢方の道へ。同社が主宰する漢方スクールで講師を務めるほか、薬膳料理のレシピ本監修なども手がける。
 

冬にぴったりな
自宅でできる薬膳

身近な食材で組み合わせ……といっても、料理をする時間がない。そんな人にもぴったりな超簡単薬膳レシピを齋藤さんに教えてもらった。

■石狩鍋
忙しい年末年始でも、鍋なら簡単で集まりごとにもぴったり。元気を補ってくれるサケ、身体を温めるニラや生姜、消化によい大根など、いずれも寒い季節にぴったりな具がたっぷりです。

■柿のシナモンパウダーがけ
生の柿は身体を冷やすとされますが、同時に喉に潤いを与えてくれる効果も期待できます。柿をレンジで軽く温めシナモンパウダーを振りかければ、喉を潤す温かいデザートになります。

■大根飴
1cm角に刻んだ大根を瓶に入れ、大根がひたひたになるくらいの蜂蜜を加えて一晩寝かせます。喉に違和感を感じたら、液体をお湯やお茶に入れて飲んでみてください。喉がスッキリしますよ。


多角的に漢方に触れる複合施設
ニホンドウ漢方ミュージアム(表参道)

 漢方に基づく商品開発や書籍監修事業などを行う〈薬日本堂〉が手がける複合ショップ。漢方スクールでは、薬膳や漢方を気軽に学べる1DAYセミナーが人気。また、漢方ブティックでは、身体の不調に合わせて最適な漢方薬を提案してくれるカウンセリングを受けられるほか、化粧品や健康食品、お茶などの各種商品販売も行う。地下1階の〈薬膳レストラン10ZEN〉では、「薬膳スープ粥」や「薬膳スープ鍋」など、薬膳の知見を生かしたメニューを展開。店内には自身の健康状態を知ることができる体質タイプチェックシートもあり、そのときの自分にぴったりなメニューを選ぶことができる。通し営業なのもうれしい。

住|東京都港区南青山5-10-19 青山真洋ビルB1〜2F
電|03-5774-4193
営|11:00〜20:00

【レストラン】
電|03-6450-5834
営|11:00〜22:00(LO/21:00)
休|無休

【スクール】
住|東京都渋谷区神宮前5-53-67
電|03-6712-5920
営|9:30〜18:00
休|月曜
https://www.nihondo.co.jp/

metro274_special_02_2.jpg

「薬膳スープ粥」(海鮮)980円。プレーン、野菜、蒸し鶏と生姜など数種から選べるお粥。海鮮はイカ、エビ、ホタテ入り。棗、ハスの実、生姜など5種の素材を組み合わせている。

metro274_special_02_3.jpg

metro274_special_02_4.jpg


食材へのリスペクトが詰まった火鍋
薬膳火鍋らかんか(築地)

 かつては渋谷でステーキハウスを営み、多くの従業員を抱えていたというオーナーの森田さん。その頃、青山の国連大学で始まった「ファーマーズマーケット」で多くの生産者に出会い、オーガニックの世界に惹かれていったことが薬膳の道へ進むきっかけだった。鍋に用いる野菜はもちろん、肉や調味料、スパイスに至るまで自然栽培や農薬未使用栽培、放牧畜産にこだわり抜く。鍋のダシには現在4軒の養鶏場でしか生産されていない「東京しゃも」のオスのみを用い、うどんは自ら手打ちする。素材にこだわる分、もちろん原価も上がる。だから常時スタッフは雇えない。しかし、そこに葛藤はない。毎日一人で仕込み、調理、接客まで楽しそうにこなす森田さんの理想の食のかたちがここにある。

住|東京都中央区築地6-12-10
電|03-6264-5174
営|18:00~22:00(完全予約制)
休|不定休
@rakanka.jp

metro274_special_02_5.jpg

「薬膳火鍋」(蝦夷豚)9900円。無投薬の蝦夷豚を提供直前にスライス。8〜10種のきのこや色とりどりの野菜とともに2種のスープで味わう。党参やキバナオウギなど30種の食材とスパイスをブレンドしたスープは野菜や肉の力強い味わいに負けないほどの滋味深さ。これに前菜8種盛りと手打ちうどんもついている。

metro274_special_02_6.jpg

metro274_special_02_7.jpg


「おいしい」が足を運ぶきっかけに
日みつ(代々木)

 幼少期に母の読んでいた食事療法の本に触れ、「医食同源」という言葉を身近に感じていたという店主のるうさん。10年以上漢方の勉強をつづけ、学んだことを「形にしたい」と2023年にカフェを開いた。その豊富な知識に裏打ちされた「薬膳定食」は主菜と副菜をチョイスでき、副菜は気になる悩みごとのおすすめが表示されていて選びやすい。メニューはもちろん季節変わりで、主菜は陰陽五行説の哲学に基づいた季節の養生メニュー。たとえば乾燥しやすい秋口には、乾燥に良いとされる甘酸っぱい味のいちじくを主菜に合わせる。ただ、あくまでおいしく食べてもらうことが大前提。その信条通り、旬の味を最大限に生かした手料理の数々は、「医食同源」の知識を抜きにして、純粋に食べたくなるものばかりだ。

住|東京都渋谷区代々木3-29-5-2B
電|03-4363-9963
営|12:00〜15:30/金曜12:00〜15:30、18:00〜22:00
休|月・火曜※詳細はSNSで要確認
@hi_mitsu_yakuzen

metro274_special_02_8.jpg

「薬膳定食」2450円。食材は自然栽培にこだわる農家さんのものを中心に、お米も毎日店で精米している。味噌汁の味噌は自家製。るうさんが目指すのはあくまで家庭料理。気をてらわず、普段手に入る食材でメニューを考案しているそう。身体の調子に合わせてるうさんが選んでくれるお茶や、白キクラゲのデザートも絶品。

metro274_special_02_9.jpg

metro274_special_02_10.jpg


天然素材のみの絶品スイーツ
ShizukuAR(北池袋)

 ローカルな雰囲気の漂う北池袋から徒歩1分ほど。駅の改札が見えそうなほどの好立地とは思えないほど静かな一角にカフェ〈ShizukuAR〉はある。中国出身の洪さんが、薬膳の専門家とともに考案したメニューをバリエーション豊かに展開。中国ではお馴染みのドリンク「酸梅湯(サンメイタン)」をはじめ、提供直前に茶葉と数種のハーブを煎って出す容量たっぷりの焼きミルクティーや棗や桑椹(そうじん)(桑の実)、枸杞子(くこし)などでアレンジしたハーブ豆花など魅力的なメニューが並ぶ。なかでも酸梅湯と6種のスイーツがセットになった「薬膳アフターヌーンティー」が大好評。ドリンク、スイーツともに添加物や人工調味料は使用せず、甜菜糖や棗などで自然由来の甘さを引き出している。棗の風味を生かしたグルテンフリーの棗ワッフルもおすすめ。

住|東京都豊島区池袋本町4-1-1 三基富士ビル1F
電|03-6907-0083
営|火曜10:00〜15:00/水〜土曜10:00〜17:00
休|日・月曜、祝日
@shizukuar_herb

metro274_special_02_11.jpg

「薬膳アフタヌーンティー」3000円。ハーブ豆花や棗アイスクリームなど手作りスイーツ6種と酸梅湯がセットになった看板メニュー。酸梅湯は18世紀前半に清の乾隆皇帝が宮廷の油っこい料理の消化を助けるために飲んでいたと伝わる。土鍋で沸かした天然水に烏梅(うばい)、陳皮(ちんぴ)、山査子(さんざし)、甘草(かんぞう)と氷糖を加え、じっくり煎じ72時間熟成。自然由来の甘酸っぱさがクセになる。

枸杞子、大棗、桑椹、山査子をブレンドした「健美 焼きミルクティー」も人気。

metro274_special_02_12.jpg

metro274_special_02_13.jpg





この記事をシェアする

LATEST POSTS