illustration: Yurina Sato

癒やしで映える #自然界隈《東京#CODE》


 「今日は社会にもまれたストレスを吹っ飛ばしに、友達と自然豊かな場所に行ってきます!」。Tik Tokにこんな動画が流れてきました。ハッシュタグには#自然界隈とあります。

 ここ最近、週末ちょこっと日帰りしたり、一泊旅で自然豊かな場所に行ったりすることがグッと増えました。そのきっかけはやはりコロナ禍のように思います。都会で暮らす息苦しさもあって、週末くらいは自然の中に行きたい。以前は、長めの連休があれば海外旅行にも行っていたけど、この円安では気軽にハワイにも行けない。予算のことも考えたら、都内からサクッと行けちゃう郊外日帰り旅は、 週末にもってこいなんです。

 その中でも最近人気が高いのが、秩父や日光、山梨など。車を持っていない若者にとっても、 都心から電車で気軽に行けちゃうエリアです。ポストされる写真を見てみると、山登りしてたどり着いた絶景だったり、豪壮な滝だったり、深い森の中だったり。自然いっぱいの景色で、まさに究極の“映える”スポット。ただし、そこはやっぱりZ世代。以前はやった山ガールと違って、自然の中でもおしゃれ全開ということ。山ガールは山登りや山歩きが目的だったので、ファッションも《パタゴニア》や《ノースフェイス》など、アウトドア系でしたが、いまの自然界隈ガールたちは、まるで渋谷や原宿を歩いているようなファッションで山に行きます。ときにはサンダルやミニスカート姿で、山歩きの格好にはとても見えないスタイルの子が多く、ちょっとハラハラします。女子だけでもなくて、自然界隈男子も増えています。全身黒系のカジュアルスタイルで、ときにブランドもののアイテムを身につけて、 こちらもとても山歩きスタイルには見えないのが特徴なのです。

 また、遠出をしなくても、都心でも自然は楽しめます。日比谷公園だって、代々木公園だって、池があったり緑が深くて癒やしスポットです。

 新大久保あたりのコリアンタウンで映えスイーツを撮ったところで、もはや差別化ができない今日このごろ。より目立つなら自然の中へ、というのも納得です。自然を背景にしたポストのコメント欄を見ると、「えー、素敵! どこですか?」とか「今度私も行ってみたいです!」とか、フォロワーからの熱いリアクションの嵐。映えて、インプレッションも高く、なにより自然は気持ちいい。気分もデトックスできちゃう!といいことずくめ。そう、幸せはこんな近くにあったのです。まるで童話『青い鳥』ですね。

 そんな折、私も富士山麓の森ツアーに参加してきました。足元のふかふかの土、小鳥のさえずり、森のひんやりした空気、それだけで日々の疲れが浄化されます。ツアーガイドのレクチャーを聞いたり、山道できのこを発見したり。日々忘れがちな当たり前の自然に癒やされる。同行していた20代女子もめちゃくちゃ盛り上がっていました。

 「日々ストレスあるし、なにより自然界隈はお金がかからないからいいですよね」と。

 一方で、富士山近辺のオーバーツーリズムの弊害もしっかり味わいました。インバウンド客で電車もめちゃ混んでいる。ルールを守らない観光客は困りものです。自然の中に行くときは、 あまり軽装は禁物。ルールを守って、よい自然との付き合い方をしましょうね!

THIS MONTH'S CODE

#自然界隈

最近の傾向で、なんでも“界隈”とつけがち。ネット用語の「界隈」は、特定の属性やジャンル、業界、関係者を指すことが多い。

#秩父や日光、山梨

電車の便もよく、都心からも片道2〜3時間で行けちゃうので、車を持っていない若者に人気。

#山ガール

2009年ごろにブームとなった森ガールに続いて、アウトドアファッションを取り入れた女子を山ガールと呼ぶようになった。





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