photography=SAORI TAO

vol.9 遠くても同じ空気を分け合って大事なことから順に忘れる[岡本真帆のうたかたの日々 日付のない日記]

コラム

遠くても同じ空気を分け合って大事なことから順に忘れる

 近頃、setlogというアプリにはまっている。1時間に一度、短い動画を撮影することで、1日の終わりにはその日の記録がVlogになっているというものだ。韓国で話題になり、日本でも今ブームになっている(この原稿が掲載される頃には流行が終わっているかもしれない……そのときはごめんなさい)。まさか自分にも、Vlogをつくる日が来るなんて。特別な技術はなにも要らないから、家から一歩も出なかった休日もなんとなく様になるし、どうでもいい瞬間も繋げばそれっぽくなる。何もない日だと思っていたのに、案外いろんなことをやってたな、とちょっと誇らしくなるのがいい。

 ひとりで黙々とつくるのも楽しいけれど、友達とグループをつくるとまたおもしろい。同じ時間に友達が何をしていたか、時間軸で一覧に並ぶから、一緒にいなくても同じ空気を共有している感覚になる。シェアしない限り外には出ないので、本当に個人的なことを気軽に置いておける。ストーリーズの限定公開よりも、もっと親密で、距離が近い。

 私が短歌をつくるのは、些細だけど素敵なことを残しておきたいからだ。Vlogと短歌はまったく異なるけれど、似ているところもある。何を残して、何を忘れていくのか。本当に大事なことを忘れる速度だけは、どうかゆっくりであってほしいと願う。


岡本真帆(おかもと・まほ)
歌人・作家。1989年生まれ。高知県出身。2022年に第一歌集『水上バス浅草行き』(ナナロク社)、2024年に第二歌集『あかるい花束』(ナナロク社)を刊行。最新刊に、自身の好きなものを短歌とエッセイで表現した『落雷と祝福』(朝日新聞出版)がある。



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