photography=SAORI TAO

vol.10 暗転に不意の目配せ、愉しげにその指先は罠を暴いて[岡本真帆のうたかたの日々 日付のない日記]

コラム

暗転に不意の目配せ、愉しげにその指先は罠を暴いて

 『古畑任三郎』を観るのにハマっている。田村正和演じる古畑が犯人のトリックを崩していく一話完結の推理物だ。冒頭で犯行のすべてが明かされるため、完璧に見えるアリバイのほころびを古畑がどう突くのか、想像しながら観るのが楽しい。

 小学生の頃もテレビ放送を楽しみに観ていたが、Netflixでの配信を機に、実は初めてシーズン1から観直している。私が育った高知には当時、フジテレビ系の局がなかったからだ。

 大人になった今、私はこのドラマの「型の美しさ」に魅了されている。テーマに沿った前口上、お馴染みの音楽、犯行シーンから始まるお約束、そして解決前の暗転と視聴者への語りかけ。型が決まっているからこそ、安心してその中での差異を楽しめる。

 心を揺さぶられたくてエンタメに触れるのに、本当は揺さぶられたくないのだろうか。私がこの作品の連続再生がやめられないのは、ここにあるのかもしれない。刺激と安心の、ちょうどいい塩梅がここにある。


岡本真帆(おかもと・まほ)
歌人・作家。1989年生まれ。高知県出身。2022年に第一歌集『水上バス浅草行き』(ナナロク社)、2024年に第二歌集『あかるい花束』(ナナロク社)を刊行。最新刊に、自身の好きなものを短歌とエッセイで表現した『落雷と祝福』(朝日新聞出版)がある。



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