いか文庫が選ぶ “エア旅行”に行ける一冊 Vol.2 [旅する小説]


 連載「本日は閉店なり」でおなじみの、エア本屋「いか文庫」店主&バイトスタッフが厳選したエア旅行におすすめの一冊!


バイトいもイチオシ小説『日の名残り』

著:カズオ・イシグロ 訳:土屋政雄 早川書房 836円

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ひとりの紳士の姿を通して、
古きよき英国とその歴史の世界観を味わう。

 主人公の生真面目さが伝わる、おかしいほどにていねいな語り口が次第に心地よくなる物語。旅路のあいだ、尊敬する英国貴族に長年仕えてきた日々や、淡い想いを抱いた女性とともに働いた思い出に浸りながら、自分の人生の意味と残りの人生をどう生きるのかを考える姿に、自分を重ねて考えたくなります。ガイドブックにないイギリス文化や歴史、美しい自然風景も存分に思い浮かべられる一冊です。

《Story》
 ときは第二次世界大戦後。貴族の館に人生を捧げてきた老執事スティーブンスは、ある日家主に休暇を勧められる。そこで、いままで本でしか見たことのない絶景をめぐり、かつての同僚ミス・ケントンに会いに自動車旅に出て…。

 

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バイトいも

この8月までロンドン支社で勤務していたが、帰国。山形出身。店主のじつの妹。かつて高級アパレル店で接客をしていただけあって、おしゃれ大好き。店主の専属スタイリストでもある。


バイトちゃんイチオシ小説『浮遊霊ブラジル』

著:津村記久子 小学館文庫 726円

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幽霊になって、誰かに取り憑きながら世界旅行しちゃおう!?

 主人公は、幽霊。でも決して怖くない、チャーミングな“浮遊霊”なのでご安心を! 町内会の知人、お金持ちのモテ男、スポーツ選手など、アイルランドへ行きそうな人たちに、主人公が次から次に取り憑き、いろんな人生を体験しながら国内外へと旅していきます。もし自分が浮遊霊になるとしたら、誰に憑いて、どこへ行こうか? そんなふうに地図を広げて、旅の計画を立てたくなる一冊です。

《Story》
 楽しみにしていた初めての海外旅行の直前に、死んでしまった主人公。未練を残したままあの世へは行けず、浮遊霊として人に取り憑きながら旅行しようと決意する。そうしてアイルランドのアラン諸島を目指すのだが…。表題作を含む七篇を収録。

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バイトちゃん

ベトナム支社勤務。新潟出身、ハノイ在住。“いか”を食べるのも見るのも調べるのも好きな、いか文庫の「いか担当」。推しはアオリいか。いか以外で好きなものは、ラジオと揚げ春巻き。
@ika_baitochan


バイトぱんイチオシ小説『クラウド・コレクター〈手帖版〉雲をつかむような話』

著:クラフト・エヴィング商會 ちくま文庫 1045円

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ものすごく遠くて、すぐ近くにある…。
そんな不思議な国を旅してみよう。

 最も遠い場所であり、同時に近しい場所でもあるという「アゾット」。独自の文化や風習をもつ21のエリアからなり、それぞれのエリアにある醸造所で真夜中につくられる蒸留酒や、道中に出会う不思議な人たちには、どんな意味や秘密があるのか…。読み進めるうちに、架空の国であるはずの「アゾット」が実在していて、まるで自分がその世界に入り込んだような、そんな「空想旅行」が楽しめます!

《Story》
 クラフト・エヴィング商會先代の吉田傳次郎が残した旅行鞄には、それぞれラベルの違う21本のビンと1枚のパスポート、そして数冊の古い手帖が入っていた。そこに書かれていたのは、遠国「アゾット」への旅行記をひもとく物語だった…。

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バイトぱん

東京支社勤務。イカの街・八戸出身。リアル本屋2軒でアルバイトをしながら、フリーでデザインの仕事も。好きな食べ物はパン。個人でも、本にまつわる楽しいことをいろいろと(@panym_)。
@baitopan


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