重いコートを脱いで足取り軽やかになる季節。寒さで縮こまっていた身体もそろそろ起動させたいですね。今月は、春の気分を後押しする躍動的な音楽をご紹介します。
クラフトフォークともいわれる、野花のように可憐なレイチェル・ダッドの音楽。最新作『FLUX』はいつになく快活な仕上がりで、ベースサウンドが躍動し、温かな音色の楽器が愉快にリズムを刻んでいます。あちこちに出てくる海のモチーフは、命を育む源、形を留めない自由さのイメージでしょうか。出航する船にさわやかな追い風を吹かせるような、エネルギーに満ちた作品です。
フランスのシンガー・カミーユの『OUÏÏ』は、太鼓と歌だけで構成された前衛的なアルバム。ドンドン…と低い太鼓の音が心臓音を思わせる「2012」から始まり、「Twix」ではハイトーンボイスが炸裂。ブレスノイズや物が擦れる音さえ楽器となり、聴き手の感覚も研ぎ澄まされます。ごまかしの効かない剥き出しな感じがスリリング。まるで音楽版コンテンポラリーダンスのようです。
ラジオの人間だからでしょうか、私は音楽を季節や時間帯と結びつけるくせがあり、ヨンシーの『GO』は春の息吹みたいな印象を持っています。北国アイスランドだからこそ草木はたくましく芽吹き、眩しい音の洪水が押し寄せる。「Go Do」で力強く打ち鳴らされるドラムを聴くと
「さあ、新しい季節の始まりだ!」という感じがするんですよね。このアルバムの色彩はリリースから10年経った今も鮮やかです。
RACHAEL DADD『FLUX』
イギリス出身、尾道とブリストルを拠点に活動するシンガーソングライター。都内でのリリースツアーは寺尾紗穂を迎え3月13日(金)代官山・晴れたら空に豆まいてにて

CAMILLE『OUÏÏ』
フランス・パリ出身のシンガー。ヒューマンビートボックスを使った実験的な音楽性はビョークを連想させる。本作はアルバム『Oui』を太鼓とボーカルのみで再録音したバージョン

JONSI『GO』
シガーロスのボーカリストによる初のソロアルバム。バンド時代とは対照的に歌詞のほとんどが英語で綴られ、そこには勇敢さと臆病さが入り混じる。壮大で彩り豊かな意欲作

EMI MUSIC JAPAN 2010