(未校閲)“生活を観察する”×オカヤイヅミ(漫画家)/“山を記録する”×野川かさね(写真家)[日記って、おもしろい。]


Interview ♯1
“生活を観察する” × オカヤイヅミ(漫画家)

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 オカヤイヅミさんは日常の記録をつけ続けている。一枚絵やゆるやかにコマ割りした絵日記、文章、自炊の写真などをSNSに投稿。そのうちのいくつかは『不確定日記』『不定形絵日記』『ホットサンドだより』などのZINEにまとめられている。

 「昔は三日坊主で、継続して日記を書くようになったのはインターネットを始めてから。人に見られる場があって書けるようになりました」

 1990年代の終わりから数年間はテキストサイトの〝日記系〟、そこからブログ、mixi、Twitter(現X)、Instagram、noteなどのSNSへと場所を変えながら続く日常の観察日誌。

 「生活するなかで、人に言うまでもないことって溜まりがちじゃないですか。そのままにしていると忘れてしまうようなことを絵や文章にして、読まれても読まれなくてもいいんだけどこういうことあるよねって投稿する。小さい頃にお母さんにおしゃべりをしていた感覚に近いです。その日にあったこと、考えたことをその日のうちに書いて、書いたらすぐにあげたいので必然的に題材は自分のことばかりになりました。『夏に塗ったペディキュアを落とさないままのびたところだけ切って色があるところがなくなるまで待つ』なんてことばかり書いています」

 爪を切る描写は、連載中の漫画『ひとごとごと』にも登場する。

 「日記を書くことで、自分と生活が観察の対象になっていくんですよね。絵日記は自分というキャラクターを俯瞰して見るので、特にそうかもしれない。私はマンガでも登場人物の生活を表すディテールをたくさん描くのですが、特に『ひとごとごと』は中年女性が主人公なので観察が活用されていると思います。読み返すと、暖かくなると行動量が増えてるな、この時期にまたこれ食べてるなとか、毎年同じことを思ったりやったりしている。人間ってその時々の感情に添って生きていると思っていたけどそんなこともなくて。日記が、未来の自分への申し送りのようなものにもなっているようです」

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絵日記はiPadで。下描きはせず、時間をかけずに描くと決めている。ホットサンド、旅、日常を記したZINE各種はデザインも自ら手がけた。

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現在進行形の取材中の光景をさらりと描く。「見ないまま描くから難しいですね」。仕事デスクにはPC、液晶タブレット、キーボードなどが並ぶ。


オカヤイヅミさん
1978年東京都生まれ。手塚治虫文化賞短編賞受賞作『いいとしを』『白木蓮はきれいに散らない』など著書多数。『ひとごとごと』を「コミックビーム」で連載中。
https://www.hasumukai.jp


Interview ♯2
“山を記録する” × 野川かさね(写真家)

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 20年ほど前から、山を歩き、山を撮るときには測量野帳を持っていくという野川かさねさん。

 「山ってのんびりしているようで忙しい。いろんなことがかわるがわる起きるので、忘れないために自分の行動も含めて書きとめています。川の水に触れたら冷たかったとか、雪の結晶や光の粒をスケッチしたり、山小屋のイラストを描いたりスタンプを押したり、携行する食糧を計算するために食事の予定を書き出したり。ペンは滲んでしまうので鉛筆で書くことが多いですね。撮った写真も後から貼り付けます。海外の山に登るときは、到着時間や食べ物のことなど、旅の記録としての要素も多く入りこんできます。測量野帳は表紙が硬くて、立ったままでもしゃがんでいても書きやすいので長らく愛用しているのですが、数グラムでも荷物を軽くしたいときは、紙を折って束ねただけのメモ帳に書いて、あとから整理することもあります」

 誰に見せるためでもない、自分のための山の記録は数十冊に及ぶ。

 「同じ場所に行くときは記録を見返して、撮影のアイデアやヒントをもらいます。作品を展示するときのキャプションや山について書くときはここから掬い上げて文章を組み立てる。作品には、自分の心情や感情ではなく、山を歩いているときに受けた感覚を反映したいんですよね」

 インターネットやSNSが発達して検索できることが増えても、山肌を照らす光や風の強さは取り出せない。

「その場所にいた自分の感覚を大事にしたい。山があり、そこを歩き、立ち止まって見た景色を撮って、そんな断片を集めて山を表現したいんです。その一方で、山という存在を言葉や写真でアウトプットしようとすると、どうしてもそのものよりもスケールの小さなものになってしまいがちなので、そこは気をつけています。写真を撮る一方に書き残す記録があって、これが自分の感覚を一時的に留めおいて、呼び起こすツールになっているんだと思います」

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箱いっぱいにある山の記録の一部。屋外での時間を長く過ごすのに、軽く、薄く、丈夫な測量野帳がぴったり。薄い水色でマス目が刷られている。

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山では鉛筆を使うことが多いが、筆記具へのこだわりは滲まないかどうかの一点。開いたページには、滞在日数×2食の食糧計画が書かれている。


野川かさねさん
1977年神奈川県生まれ。山や自然の写真を中心に個展や書籍で作品を発表する。『山と写真』などの著書がある。最新刊は、編集者・小林百合子との共著『山の時刻』。
http://kasanenogawa.net


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