ピアノを中心とした音楽グループの活躍がめざましい。クラシックやジャズなどジャンルの枠にとどまらず、鍵盤から生み出される美しい音色で独自の世界観を表現するアーティストが幅広いファンを魅了している。芸術の秋に、お勧めの3組を短期連載「ピアニストの詩(うた)」で紹介する。初回は、5月にメジャーデビューし、10月13日(金)から全国ツアーが控えるRyu Matsuyama(リュウ・マツヤマ)。
情景をキャンバスに描くようにつくる
軽快なピアノが刻むメロディーとリズムに、ボーカリスト・Ryu(リュウ)の伸びやかなファルセット(裏声)が重なり、楽曲に〝大陸〟的な広がりを与える―ピアノスリーピースバンド、Ryu Matsuyamaのメジャーデビューアルバム「Between Night and Day」は、日本人離れしたスケール感あふれる楽曲の詰まった1枚だ。
イタリアで生まれ、育ったリュウ(Piano/Vo)は家族の影響でJ-POPに親しみ、日本の音楽業界を目指して2010年に来日。10代からベーシストとして活躍していたTsuru(ツル)と出会い、12年にバンドを結成した。14年には米バークリー音大卒のJackson(ジャクソン、Dr)が加入し、現体制になった。
経歴や、音楽の好みも異なるという3人が紡ぐ楽曲は一定のジャンルにとどまらず、「みんなが(思い浮かべる)風景や情景をキャンバスに描いているつもりでつくっている」(リュウ)。その風景に鮮やかな彩りを添えているのが、リュウの歌声とピアノだ。
リュウは幼少期にクラシックのピアノを始めるが、おもしろさを感じられず一時中断。中学時代はバンドでギターを演奏していたという。だが、バンド解散後、高校時代に自宅のピアノを使って自作の曲を歌いながら演奏し始めたことが、現在の原型になった。「ピアノのギターにはないメロウ(豊かな美しさ)な音色に加え、打楽器なのにあの(きれいな)音を奏でる構造にロマンを感じた」(同)