text=TOMOKO OGAWA photography=KOICHI TANOUE

vol.3 L PACK.[観る・聴く・読む・考える 光が紡ぐ言葉]

アート

 映画、音楽、演劇、小説にアニメーション……日々新しい文化芸術が生まれる街で、そのつくり手たちは、どんなことを考えているのだろうか。今回話を伺ったのは、活動の場を広げているアーティストユニット、L PACK.の2人。


アートと暮らしを結ぶ。

 「コーヒーのある風景」をきっかけに、アート、デザイン、建築、民藝の境界を越え、最小限の道具と現地の素材でまちに溶け込むような活動を続ける、小田桐奨さんと中嶋哲矢さんによるユニットL PACK.。2025年の大きな出来事は、彫刻家・藤原彩人さんらが所属するグループ「SCREWDRIVER」メンバーによる彫刻作品の型を使って、実際に食べられるおでんを振る舞うアートプロジェクト「彫刻おでん屋台“LA”」をベネチア・ビエンナーレ建築展のオープニングで行ったこと。国内のアートスペースなどでの開催を経て、今年5月に初の海外進出を果たした。

 「『Made in 青森』展を主催した方が呼んでくれたのですが、正直かなり難しかったです。すり身用の魚を現地の市場に買い出しに行っても、まず魚の名前がわからなくて(笑)」と中嶋さん。滞在中は連日おでんづくりに明け暮れたが、約200人の参加者たちの反応は上々だった。「僕らのことを知らない人たちの反応が見られたのが新鮮でしたし、もっと海外のアートイベントにも参加できたら」と補足する。「英語でふわっとコミュニケーションはできても、深い話になると全く返せなくて。作家として自分の作品については最低限きちんと言えるようにならないとなと思いました」と小田桐さんも、現地での学びを振り返った。

 12月に2週にわたって開催されるTOKYO ART BOOK FAIR 2025では、今年も飲食スペース「OUTDOOR ROUNGE」のキュレーションを手がける。会場では、来年4月に渋谷にオープン予定の、みんなで作るスタイルのミュージアムとのコラボ企画も実施。「新しいミュージアムでは、展示や教育など美術館の機能をトレースしながら、アーティスト、クリエイターと一緒に考えながら生み出していく場をつくっています」と中嶋さんは言う。

 忙しい日々の中で、自分をねぎらうものについて訊ねると、小田桐さんからは「朝起きて一番に飲むコーヒーと仕事終わりに飲むビール。日々小さい喜びで十分リフレッシュできます」という返答が。一方、中嶋さんは自宅から1分の町の銭湯へ行くという。2人はいわゆる旧来の“アーティスト然”とした昼夜逆転生活とは無縁だ。子どもたちを学校へと送り出す時間があり、運営するショップ/ギャラリーを開く時間がある。その生活のリズムこそが、日常とアートを“面白さ”というレンズで未来へとつないでいる。


□小田桐奨と中嶋哲矢によるユニットL PACK.(エルパック)。共に1984年生まれ、静岡文化芸術大学空間造形学科卒。東京・池上で〈DAILY SUPPLY SSS〉〈Try Many Times Club〉を運営。


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© Fujiko

TOKYO ART BOOK FAIR2025

Week 1 
12月11日(木)12:00-19:00
12月12日(金)- 14日(日)11:00-18:00

Week 2 
12月19日(金)12:00-19:00
12月20日(土)- 21日(日)11:00-18:00

会場:東京都現代美術館 企画展示室B2F、エントランスホール ほか 
住所:〒135-0022 東京都江東区三好4-1-1

入場料:オンラインチケット【日時指定】
一般1000円+発行手数料165円
当日券1200円
(予定枚数に達した場合はその時点で終了)

※詳細はHPを確認ください
https://tokyoartbookfair.com/

 



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