「また戻ってこられた。その喜びを私たちはかみしめている」
Interview with
Michael G. Smith
アーティスティック・ディレクター
マイケル・G・スミス
イギリス出身。パフォーマーとしてキャリアをスタートした後、世界中のさまざまなカンパニーで芸術監督を務め40年にわたりエンターテインメント業界に携わる。2005年にシルク・ドゥ・ソレイユに参加。本公演では、アーティスティック・ディレクターとして、公演の統括役を務める。
完成度の高いステージをなぜ変える必要があったのか?
5年ぶりに、シルク・ドゥ・ソレイユが日本に帰ってきた。しかも、代表作である『アレグリア』とともに。1994年初演のこの作品は、1996年と2004年には来日公演もし、世界255都市で1400万人以上を動員。2013年にいったん閉幕した。その25周年を記念して、2019年に『アレグリア-新たなる光-』としてリニューアルするも、パンデミックで休演。アーティストのほとんども、シルク・ドゥ・ソレイユを離れることになる。
だが、日はまた昇った。再建を果たしたビッグトップの下に、世界中に散らばったアーティストとスタッフが再結集。2021年には公演を再開する。しかもパンデミック期間中に演目の演出のほとんどを変更し、さらに磨きをかけたという。その意図について、本公演のアーティスティック・ディレクターであるマイケル・G・スミスはこう語る。
「パンデミックによって世界は変わった。当然、観客たちも変わっています。だから、私たちはステージを変える必要があった。いちばん大きく変えたのは、ファイナルアクトです」
旧バージョンにおいて、舞台の最後を飾っていたのは、鉄棒のみを使った高所のパフォーマンスだった。アレグリアの象徴でもあったこの演目を、彼らは休演していた約6カ月間で一新したのだ。
「とても悩みました。何を観客に見せるべきなのかと。そして最終的に選んだのがフライング・トラピス(空中ブランコ)です。この演目のために、新たにアーティストも探し出しましたが、このステージにふさわしいアクトを生み出すのはとても難しいことでした」
空中ブランコは、サーカスの伝統芸だ。そのままやっても、目新しくはない。もちろん、華麗な演出をほどこして、美しく見せることも彼らだったら簡単だったはずだ。だが、彼らはそれを選ばなかった。なにも誤魔化さず、スピード、高さ、精度を極限まで高めることで、唯一無二のアクトを生み出した。人間の限界を超えるチャレンジ。その剥き出しのエネルギーが、観客の胸を貫く。
「この新しい世界は、より良い世界になっていると私は感じています。なぜなら、パンデミックによって人々の感受性が高まったから。孤独や悲しみの経験は、本当に大切なものに気づくきっかけにもなったのです。私たちがショーに込めた愛や絆といったメッセージも、観客にしっかり届いていると手応えを感じています」
「アレグリア」とはスペイン語で「歓喜」を意味する。再び輝く新たなる光は、いま世界に喜びを与えている。
パンデミック後に再構築された新生アレグリア
物語の舞台は、王がいなくなり、かつての輝きを失った王国。約20カ国から集まった約60名のアーティストによる、新たなる光のなか対立を乗り越え、一つになる物語に心打たれる。
エアリアル・ストラップを演じる2人は、実は夫婦。命綱なしで繰り広げられる空中パフォーマンスは、2人の強い絆があってこそ。
フライング・トラピスは、空中10mで繰り広げられる華麗なジャンプでフィナーレを飾る。
ハンドバランシング&コントーション(ローテンション演目)を演じるオユン=エルデン・センゲは、劇団に18年以上在籍。2004年の『アレグリア2』日本公演にも出演している。
ショーで着用される衣装は約200着。バックステージには予備も含めて約1500着の衣装が。毎日洗濯し、補修も繰り返される。
メイクはアーティスト自身が行う。どんな人間にもつらい経験があったという印として、必ずどこかに傷が描かれている。
バックステージにあるアーティスティックテントでは、日々練習が行われている。公演が始まってからも、パフォーマンスの完成度を高める努力が続けられている。
ステージのすぐ裏には、オリジナル版アレグリアで使用されていたマスクが。その精神を忘れないために、ここに飾られてツアーに同行している。
※都合により、公演の内容を一部変更する場合がございます
ダイハツ アレグリア-新たなる光-
東京公演
公演期間:~6月25日(日)
会場:お台場ビッグトップ
問い合わせ:インフォメーションデスク
Tel. 0570-050-469(オペレーター対応 10:00~18:00)
https://www.alegria-jp.com