新年には松や鶴などのおめでたい絵を見て、晴れ晴れとしたい。縁起のよい美術品を集めた「国宝 雪松図と花鳥」展が東京の三井記念美術館で開かれている。
目を引くのが国宝「雪松(ゆきまつ)図屏風」だ。対象を正確に描く写生を重視し、江戸中期に活躍した絵師、円山応挙の作。主役は長寿や吉祥を象徴する松だ。どっしりと構えた太い幹は、風雪に耐え忍んだ長い年月を感じさせ、堂々と安定感がある。墨の濃淡によるゴツゴツとした荒々しい質感に対し、松に積もった雪は柔らか。白は和紙の地肌をそのままに生かした。
江戸時代に京都や大阪などで呉服商や両替店を営んだ豪商、三井家は応挙のパトロン的存在だった。同作は、三井家の依頼により制作されたものと考えられている。
多くの名作を残している応挙だが、国宝はこの1点のみ。同館では毎年新年に公開するのが恒例で、これを目当てに訪れる人が多い。
風格ある国宝に対し、リアルな写生と長大さに驚かされるのが応挙と同時代に生きた絵師、渡辺始興の「鳥類真写図巻」だ。