静謐(せいひつ)で底が見えないくらい奥が深い。塗り重ねた絵の具による重厚な画面に重苦しさはなく、むしろ爽やかで、絵の奥から湧き出てくるような温かさもある。日本画家、高山辰雄の絵は、深遠という言葉がふさわしい。東京の世田谷美術館で開催されている「人間・高山辰雄展」では、そんな作品に出合うことができる。
高山は主に日展で活躍し、東山魁夷、杉山寧(やすし)とともに「日展三山」と称され、日本画の最高峰として人気と実力を誇った。
東京美術学校(現・東京芸術大学)在学中の昭和9年、帝展(現・日展)に初出品し初入選。その後も入選を重ね、若くして頭角を現した。しかし、すべて順調だったわけではない。昭和21年、春の日展で落選。失意のうちに、画家仲間の薦めでゴーギャンの伝記を読んだ。人生を芸術にかけた生き方に感銘し、その作品にも傾倒していった。それ以前は「黒いもんぺ」(19年)という作品のように、薄く塗られた絵の具の穏やかな色調の日本画らしい絵画を制作していたが大きく変わっていった。
