戦後の美術を代表する画家の一人として、美術界を牽引(けんいん)してきた画家の池田龍雄さん(89)。作品は具象画から抽象画、さらには立体まで幅広く、社会状況から宇宙まで捉えようと、現在も制作を続けている。約70年に及ぶ創作の軌跡をたどる展覧会が東京の練馬区立美術館で開かれている。(渋沢和彦)
池田さんの昭和20年代の作品に「大通り」がある。道路の周囲には鋭利な強い線で描かれた木造のマッチ箱のような家々がびっしりと連なる。道路の中央をわが物顔で走るのは戦車のようだ。車体に星形のマーク。デフォルメされた褐色の塊が不安をかき立てる。強い金属と弱い木造の家が対比的に描かれている。
戦後の焼け野原となった地に次々と建つ建物を「バベルの塔」のように危うい存在としてとらえた「空中楼閣」などとともに、当時の日本社会の一断面を象徴的に描出している。