帽子をかぶった子グマ パディントンをご存知ですか? 小さな頃から、友だちのように親しんできた人も、最近の映画化によって知った人もいるでしょう。
もとは1958年、イギリスの作家 マイケル・ボンド氏が生み出した児童文学の主人公。日本で児童書シリーズを翻訳した松岡享子氏いわく、「天真爛漫、好奇心旺盛、発想力抜群、強い正義感をもち、徹底して楽天的」な愛らしい子グマのお話は、いまや40以上の言語に翻訳・出版され、世界中で愛されています。
そんなパディントンに、さまざまから角度から迫った「生誕60周年記念 くまのパディントンTM展」が6月25日(月)まで、Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷区道玄坂)で開催されています。
パディントンの魅力はどこかと問われれば、生みの親 ボンド氏が2017年6月に逝去する前にインタビューで語ったこの言葉に尽きます。「パディントンは善意に満ちています。これからも変わることはないでしょう」。パディントンの物語をよく知らない人の目には、この子グマはひょうきんで、ハプニングメーカーのように映るのかもしれません。しかし、パディントンと彼を取り巻く世界の魅力はここなのです。
南米ペルーからひとりでイギリスにやってきた子グマが、ロンドンのパディントン駅で心優しい夫婦に出会い、家族として迎えられ、さまざまな騒動を巻き起こしながら街の人気者になっていく物語は、ボンド氏の優しい眼差しに溢れています。
全5章で構成されている本展。第1章「パディントンの物語」では、児童書シリーズの挿絵を描いたペギー・フォートナムの貴重な原画や複製画、登場人物たちやイギリスの文化・名所を紹介するパネルとともに、10巻分の物語を辿っています。
散りばめられたユーモアを楽しみながら、パディントンの「善意」に心がほぐされる。第1章から、「先が気になるのにじっくり見たい」というジレンマを抱えることになるかもしれませんが、ここではぜひ時間をかけて物語を読んでください。
目に華やかなのは第3章「世界のパディントン」。「パディントン」シリーズは人気児童書となって以降、多くの絵本も出版されました。ここで楽しめるのは、絵本を手がけた幾人もの作家による、さまざまなタッチのパディントン。柔らかな水彩色のフレッド・バンベリーに、風刺画のようなユーモラスなタッチで描くデイビット・マッキー、鮮やかな色使いのジョン・ロバン、そして現在も活躍中のR・W・アリー。第4章「パディントン大活躍」に展示されているアイバー・ウッドが描いた4コマ漫画のパディントンも加えて、時代が変わっても受け継がれ、愛されてきたパディントンの変遷を楽しむことができます。
©DavidMckee/HarperCollins 2018
このほか、第2章「パディントン誕生秘話」では、ボンド氏の仕事道具や手紙類などの私物を展示。第3章には「パディントン」シリーズの翻訳者で本展の監修者でもある松岡氏とボンド氏がやり取りした手紙が公開されているなど、本当に盛りだくさんな内容です。
そして、展示の最後は、ボンド氏のインタビュー映像。冒頭で紹介した言葉を含めて、彼がパディントンについて語る言葉はあたたかく、心を打ちます。この言葉に触れるだけでも価値があると思うので、お見逃しのないように!
展示を観た後には、グッズコーナーへ。これまで未翻訳だったエピソード入りの展覧会オリジナル図録が販売されているほか、オリジナルのぬいぐるみや文房具、iPhoneケースなどを買うことができます。愛らしい子グマと一緒に、あたたまった心を忘れないように持ち帰ってください。
生誕60周年記念 くまのパディントンTM展
会期:2018年6月25日(月)まで[休館日 6月5日(火)]
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷区道玄坂2-24-1)
開館時間:10:00~18:00
※毎週金・土曜日は21:00まで(入館は各閉館の30分前まで)
入館料:一般1400円/大学・高校生900円/中学・小学生600円/親子券1500円