色と形の探求に生涯を捧(ささ)げたアンリ・マティスと、20世紀最大の宗教画家といわれるジョルジュ・ルオー。フランス近代絵画の巨匠2人の作風は大きく異なるが、ともにパリの国立美術学校で象徴主義の画家、ギュスターヴ・モローに学んだ同窓生。互いの創造性を認め合い、敬っていたことは、半世紀にわたり2人が折々に交わした手紙からうかがい知ることができる。厚い友情の軌跡を、初公開を含む絵画や直筆書簡など140点でたどる「マティスとルオー展-手紙が明かす二人の秘密-」が、パナソニック汐留ミュージアム(東京都港区)で開かれている。
まず、モロー教室時代の若き2人のデッサンや油彩画が新鮮だ。ルオーはまじめな画学生だったのだろう、男性裸体画や宗教画の習作は巧みな描写力と師譲りの神秘性を感じさせるが、後の骨太で濃密な絵画表現にはほど遠い。マティスの「スヒーダムの瓶のある静物」も、厳格な構成と明暗表現による古典的な静物画。しかし彼は早い段階で、旅などを通して光や色彩に目覚めてゆく。