2019年に上演され好評のうちに幕を閉じた、世界的スター、ビートルズのバンド創成期を描いた舞台「BACKBEAT」が再演される。ジョン・レノン役を務める加藤和樹さんに話を聞いた。

ジョン・レノン役
加藤和樹
1984年10月7日生まれ。殺陣、アクション、歌唱のダイナミックさが評判で、俳優、声優など幅広い分野で活躍中。2021年に出演したミュージカル『ローマの休日』と『BARNUM/バーナム』で第46回菊田一夫演劇賞・演劇賞を受賞。
レザーブルゾン、シャツ、ブーツ(The Viridi-anne/The Viridi-anne Tel. 03-5447-2100)
パンツ(ANEI/JOYEUX Tel. 03-4361-4464)
令和のビートルズ、再び。
待望の再演で、さらなる高みへ。
「前回の公演が終わったあとも、このメンバーでまた演りたいねと話していたので、再演が決まったときは、みんなで喜びあいました。初演をご覧くださった方々からも再演を心待ちにしていたという声が多く、気が引き締まる思いです」
本作は1994年公開のビートルズの伝記映画『バック・ビート』を、監督のイアン・ソフトリーが自ら舞台化。結成当初は”5人編成”だったビートルズの下積み時代をフィーチャーし、若者らしい爆発的なエネルギーでハンブルクへ巡業していた時代を描く。実際に彼らに起こった史実をもとに、加藤和樹さんらが演じるビートルズによる生演奏と歌唱で、その足跡をたどる青春物語だ。
「前回の財産をいかし、今回は、未完成のビートルズが演奏技術やライブパフォーマンスを向上させ、バンドとして大きく成長していく過程も繊細に表現したいと思っています。結成時のサウンドから研ぎ澄まされていく、絶妙な音の変化みたいなものも感じていただきたいです」
台本を読み、まず取り組んだのは、“あえて捨てる”ことだった。
「体は意外と覚えていて、再演には、前回の演技や感覚を無意識になぞってしまう難しさがあるんです。そういったものを一度リセットし、演出の石丸さち子さんがビートルズを、メンバーそれぞれをどう表現したいのかを新鮮に感じながら、新たな芝居を生み出したいです」
初演で不世出のカリスマ、ジョン・レノンを大胆かつ繊細に演じ切った加藤さん。当時の胸中を打ち明ける。
「当時のビートルズは革ジャンにリーゼントヘアで、ジョンは、下品で粗野。やんちゃな悪ガキみたいな感じで。いまでは聖人君子のように思われている彼にもそんな時代があったことを知ると親近感が湧き、とても身近な存在に思えました」
だが、稽古場では偉大すぎる彼の存在を、最後までつかめなかったという。
「石丸さんにも言われ、悔しかった。では、何をすればいいのだろうと考えた結果、“演じるのをやめよう”と。メンバー(戸塚祥太、辰巳雄大、JUON、上口耕平)に身を委ねて頼り、任せると、悪ガキのジョンに対する接し方で応えてくれたんです。まわりがジョン・レノンをつくってくれたことに気づけたとき、とても楽になりました」
ビートルズはやんちゃもするし、心が揺れ動いて葛藤もする、人間味あふれるロックンローラーだった。
「演じるのではなく、彼らの半生を生きるという覚悟を持って挑みます」
見どころは、ビートルズ初期の粗削りながらも勢いのある、20を超える楽曲の生演奏。そして彼らが電光石火のごとく駆け抜けた、青春時代の光と影の描写だ。
「往年のビートルズファンはもちろん、彼らの過去や、ビートルズを“ビートルズ”たらしめるものが何かを知らない人に見ていただきたいです。『バックビート』はライブに近い芝居。音楽フェスやライブハウスに行きたくなるような高揚感も味わえると思います。4人組になるまでにあった、喜怒哀楽が複雑に絡み合う5人の人間模様も見逃せません」
そして、物語のキーパーソンで初期メンバーのひとり、戸塚祥太さんが演じるスチュアート・サトクリフにも注目したい。
「スチュ(スチュアートの愛称)を知っている人は少ないかもしれませんが、ジョンが惚れ込む芸術的センスの持ち主で、ポール・マッカートニーが嫉妬したほど。ビートルズの名付け親とまで言われていますから、ビートルズを語るうえでは絶対に欠かせない存在です」
初演を成功させた、華と実力を兼ね備えた戦友が再び集まり、ビートルズに多大な影響を与えたアストリッド・キルヒヘル役に、新たに愛加あゆさんを迎えて動き出した、新生「バックビート」。令和のビートルズから目が離せない。
STORY
1960年、イギリス・リヴァプール。絵の才能を持つスチュアート・サトクリフ(戸塚祥太)は、同じ学校に通う親友ジョン・レノン(加藤和樹)に誘われ、ロックバンドにベーシストとして加入する。スチュアート、ジョン、ジョージ・ハリスン(辰巳雄大)、ポール・マッカートニー(JUON)、ピート・ベスト(上口耕平)の5人の“ビートルズ”は、巡業で訪れたドイツ・ハンブルクの地で頭角を現していく。とある夜、スチュアートは彼らのライブに来ていた女性写真家のアストリッド・キルヒヘル(愛加あゆ)と運命的な出会いをし、二人は恋に落ちる。スチュアートはアストリッドとの出会いをきっかけに再び絵を描き始め、画家の道を志すが、ビートルズは魅力的なナンバーを次々に打ち出し、評判は日に日に高まっていく――。
INFORMATION
舞台「BACKBEAT(バックビート)」
[プレビュー公演]
4月23日(日)
江戸川区総合文化センター 大ホール
[東京公演]
5月24日(水)〜31日(水)
東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
会場(全席指定)
S席:10,500円 A席:7,500円
※未就学児入場不可
原作:イアン・ソフトリー、スティーヴン・ジェフリーズ
映画「BACKBEAT」
翻訳・演出:石丸さち子
音楽監督:森大輔
出演:戸塚祥太(A.B.C-Z)、加藤和樹、辰巳雄大(ふぉ〜ゆ〜)、JUON(FUZZY CONTROL)、上口耕平、愛加あゆ、鍛治直人、東山光明、西川大貴、加藤将、工藤広夢、尾藤イサオ
https://www.backbeat-stage.com