illustration: Shogo Sekine

《東京#CODE》インスタ鷺(さぎ)って呼ばないで


 表参道はインスタ自撮りガールの聖地です。あちこちに可愛いインスタ映えするビジュアル系スイーツを求めて、行列ができています。この原稿を書いている暑い盛りの炎天下でも、1時間待ちなんてへっちゃら。私の行きつけのCITYSHOPというサラダデリも最近すっかり行列系の店です。ここの1600円の5デリプレートは、その芸術的な盛り方でも人気。ある女子は、窓際でお皿と自分を一緒に撮ろうと必死でした。真横から彼女を見ていると、違和感を感じました。白っぽい顔の色と首筋の色が、顎あたりから2トーンになっているんです。つまり正面だけメイクなのです。まるで2次元!一緒にいた某メイクアップアーティスト(ゲイ)と、思わず顔を見合わせてしまいました。「そうなのー、彼女にとって自分の顔はBeauty Plusの加工込みなの。正面しか撮らないから横顔なんて気にしないのね。なんだかみんなにメイク教えているのが虚しくなっちゃう(溜息)」

 また、こんなこともありました。テーマパークで頭にカーラーを巻いている女子を見かけたのです。まじか!遊園地でカーラー。かなりシュールです。でも本人は全く恥ずかしがるわけでもなく、彼とデートを楽しんでいます。そして自撮りをするときになって、突然そのカーラーを取って、軽く手櫛で整え、彼氏と顔を寄せ合ってラブラブショット。もうですね、何が"表=パブリック"で何が"裏=プライベート"なのかわかりません。彼女にとってのパブリックはインスタの中の世界。それ以外の世界は、彼女にとって家の中の延長で、裏側の世界なんです。

 インスタは、写真を公開することで新たなパブリックな場所を作り上げました。世界中から直接顔を知らない人でも繋がれる。そして有名になれば、フォロワーが増えて、みんなから「いいね」をもらえる夢の場所。でも、写真は嘘がつけます。加工アプリの流行は、「リアル」をいとも簡単に塗り替えてしまいます。加工したインスタの中の自分に慣れると、朝すっぴんで洗面所の鏡の中の自分にがっかりする。加工のない世界はつらい現実。

 今や日本よりSNSカルチャーが暴走している中国では、フォロワーの数はそのまま年収に関わります。100万フォロワーがいるインフルエンサーを集めた上海のイベントに行ったことがありますが、集まった女子の顔は整形で、同じ細い鼻、細いあご。真っ白い厚塗りメイクはリアルではまるで化け物です。インスタで起きていることは、実はリアルじゃない。私たちの毎日はそこまでキラキラしてません。インスタの世界は魔法の世界です。資生堂では自撮り写真を加工してくれるAR機能を搭載したアプリを開発しました。このアプリを使うと、自分の写真に資生堂のアイテムを使ってメイクをしてくれます。アプリで化粧品をお試しできちゃうのです。

 最近では、こんなインスタ映えを気にする女子たちを「"インスタ蠅(ばえ)"が大量発生中」と、揶揄する人もいます。確かに、握りたての寿司が置かれても写真に夢中で一向に食べない友達は、ちょっとうざいですよね。

 偽物の国のお姫様は幸福なのでしょうか? トランプ大統領のように自らフェイクニュースの番組を作っちゃう人もいますから、意外とリアルはどうでも良いもかもしれません。人生も、加工できたら最高なのにね(笑)。

THIS MONTH'S CODE

#CITYSHOP

ベイクルーズが経営するグルメサラダを中心としたデリカテッセン。PARIYAを経営する吉井雄一氏がプロデュース。2階はセレクトショップ。

#Beauty Plus

盛りカワ加工アプリの元祖。インスタグラマーのスマホに必ず常備されている。SNOW的機能も搭載。

#AR機能を搭載したアプリ

資生堂のアプリ「カラーシミュレーション」では実売されている商品をARで体験できる。また、資生堂ではテレビ会議で自動的にメイクアップしてくれるアプリ「TeleBeauty(テレビューティー)」も開発している。





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