llustration: Shogo Sekine

《東京#CODE》#服よりもメイクに命とお金をかけてます


 9月某日、ラフォーレ原宿の前を通りかかると、久々に見る人だかり。平日なのに何かしらと覗くと、イガリシノブさんがプロデュースした「WHOMEE」のPOP-UPショップでした。原宿の行列&人だかりは、いつでも時代を映す鏡です。80年代のなめ猫ブーム(古!)、90年代は裏原ブーム、最近ではパンケーキ、ポップコーン、かき氷。そして2018年はビューティブランドです。竹下通りにできた最新韓国コスメブランド《3CE》 、渋谷駅の東急東横店の《Celvoke(セルヴォーク)》も、夕方はOLの皆さんですごい人だかり。女子はスイーツよりも、コスメブームのようです。前述のイガリさんは「おフェロメイク御三家」の一人。おフェロメイクとは、女優の石原さとみさんやモデルの森絵梨佳ちゃんみたいな、お風呂上がり風の紅潮した頬、ぷっくりした唇が特徴の「おしゃれ+フェロモン=おフェロ」メイクのことです。

 また、続々と上陸している韓国コスメ。《3CE》は韓国ネットECの雄、スタイルナンダのオリジナルブランドです。ちょっと前までは白肌、太眉のくっきりした「オルチャンメイク」がメジャーでしたが、今やふわっと柔らかな「フンニョメイク」=温かみのあるふんわりした雰囲気の女の子メイクが主流なんだとか。メイクの流行はファッションより際立ってます。

 最近のデータで、化粧品消費額が婦人服の消費額を抜いたことがニュースになりました(2017年 総務省家計調査より)。なんと、ファッションよりビューティなんですと。これはファッションを仕事とする私にとっては、結構衝撃的な出来事でした。確かに最近、ビューティ業界がとても元気です。資生堂は2018年の上期だけで、前年の2倍を超える営業利益があったそうです。これにはインバウンドと海外(特にアジア圏)の伸びもあるのですが、今や日本はちょっとしたビューティバブルです。

 デパートに行くとそれは顕著です。いちばんにぎわっているのは、たいてい1階のコスメコーナー。ファッションフロアは閑散としていることも多いのです。周辺の女子に聞くと「5000円で服1枚買うより、同じ金額でリップ買ったほうがずっとコスパよくないですか?」との答え。「インスタでも、最近は服よりも、コスメの"置き画"ネタをあげるほうが"いいね"が多くて」なんだそうです。女子YouTuberも、主流は美容系。チャンネル登録者98万人のふくれな(fukurena)ちゃんとか、102万人のさぁや(saaya)ちゃんとか、メイクは動画と相性がいいのです。

 ファッションはやっぱりスタイルがいいコにはかなわない。だけど、メイクには夢がある。スタイル悪くても、ちょっと顔がナニでも、化粧品でなんとか変身ができる。ほぼ詐欺のようなメイクだってできちゃう。それは魔法。そして、誰にでもみることができる夢。「あのコだってあんなに可愛くなれるなら私だって」。これが今のビューティブームの原動力です。道具と少しの技術があれば、顔は変えられる。あと、加工アプリもありますからね。男子って見ているようで女子のファッションを見ていません。やっぱり最後に勝つのは"顔"なのか? そこは"愛"だと言いたいのは、私がおばさん世代だからかもしれません(笑)。

THIS MONTH'S CODE

#Celvoke(セルヴォーグ)

OLに人気の《snidel》などで有名なマッシュホールディングスが手がけるナチュラル&オーガニックなメイクブランド。大人可愛い色のリップが人気。

#おフェロメイク御三家

河北裕介さん、久保雄司さん、イガリシノブさんたちが人気。雑誌『ar』が提唱して人気ワードに。

#置き画

インスタなどで、物だけをおしゃれに構成した写真のこと。雑誌業界用語では“ブツ撮り”。

#加工アプリ

加工アプリは中国発が主流。写真だけじゃなくて、最近はtiktokなどによる動画の加工もお手のモノ。こうなると何が“リアル”なのかがわかりませぬ。





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