「古着女子」@furuzyoというインスタのアカウントがあります。フォロワー数24万人。タイムラインには古着を着こなした女子の写真が並びます。お気に入りのアイテムを見つけたら、プロフィールのアカウントからECに飛んで即購入。コーデ提案もされているから、ちょっと古着が苦手な子も簡単に着こなしごとゲットできちゃう、人気のアカウントです。最近、10代、20代の女の子に好きなブランドを聞くと、まあまあの確率で「古着」と言われます。原宿や下北あたりには、新しい古着屋さんも増えているようです。昔の古着ブームと違うのは、各ショップがインスタアカウントをもっていて、店頭だけじゃなくてインスタからでも売れちゃうこと。大事なのは「一点もの」
というところです。インスタにアップされたアイテムは、瞬く間に売れてしまいます。それは一点ものだからです。デパートやショッピングビルに行けば、大量の服があります。だけど古着好きな女子は、「誰ともかぶらない自分だけのオリジナリティー」が重要。お気に入りを見つけたら即購入がルールです。
その「古着女子」を運営する会社、yutori (ゆとり)を訪ねました。場所は下北沢の一つとなりの駅、東北沢。社長は若干25歳の片石くん。パステルカラーの壁、棚には古着がたくさん積まれている小さなオフィスで、インスタで見ていた女子たちが働いています。ゆるっとしたスエットに、丸メガネ、たぽっとしたスカート。まさに古着女子スタイル。部屋の奥にはインターンの高校生がビーズクッションに埋まりながら、スマホでお仕事しております。
その25歳の社長から最近発売になったという単行本『古着女子』をいただきました。パステルトーンの表紙には、ゆるっとした手書き風フォントで「古着女子」というタイトル。#ヴィンテージ #USED #古着好き #90’s #フルジョとハッシュタグ入り。女の子のイラストも描かれています。働いている子たちもとても優しくて、真面目です。
@furuzyoとは別のアカウントで、ゆるかわダボ古着専門の「ひとくち」@o0_hitokuchi_というアカウントでは、もっとガーリーな古着スタイルが提案されています。キャプションには、「昔からこんぺいとうが好きだった 小さいのに一粒で幸せになれる 今日は何色から食べようかな」というポエムつき。ちなみにこれは"光に透けるこんぺいとうとブラウス"の説明です。ファンシーです。毎週木曜日にはインスタライブもしていて、お客さんからの質問にも答えながら商品を販売しています。ゆるっとしているけど、ファン層とちゃんと繋がっている、これがこの世代の特徴です。
そして気になったのがポエムです。ルミネの広告もコピーというより、ポエムな言葉が胸を打ちます。たとえば写真家蜷川実花さんとコピーライター尾形真理子さんによる春のキャンペーンのコピーは、「わたしの夢を奪うわたしになるな」。ここでもゆるっとしたフォントが使われています。
古着女子とルミネの広告。二つに共通していることは"角"がないということ。ゴシック体でもなく、強めの写真でもなく、色もやわらかなパステル。誰も傷つけたくない、だけど個性的に生きたい。優しさの裏にある現実逃避。そこも含めてゆとり世代の丸い価値観は、21世紀らしい選択なのかもしれません。
THIS MONTH'S CODE
#若干25歳の片石くん
株式会社yutori社長。1993年生まれ。明治大学卒。Twitterのアカウント、ゆとり社長(@katap_yutori)も人気
#単行本『古着女子』
古着の着こなしやショップ案内まで、今の古着事情がわかる一冊(ぶんか社ムック刊¥1000)
#「わたしの夢を奪うわたしになるな」
モデルに起用された高橋ららちゃんのパパは《UNDERCOVER》のデザイナー高橋 盾、ママは元モデルの森下璃子