illustration: Shogo Sekine

#リアコ女子&#NHK問題《東京#CODE》

コラム

 仕事仲間の女子が「私、今週は2回ソウルにいくんです」と告白しました。頻繁にソウルを往復する彼女。その理由は韓流グループのファンミーティングなのだとか。いやいや、かなりののめり込み。「追っかけ?」と聞くと、「いや、リアコなんです、私」という答え。リアコ??? 去年あたりから時々聞くこの言葉。リアコ=リアル恋。恋の相手は韓流スターだったり、ジャニーズだったり、配信系だったり。主に3 次元&2.5次元アイドルに本気で恋するファンのことを指します。

 リアコの彼女たちは好きな人に会いに行きます。ライブ、ファンミーティングは当たり前。収録のあるスタジオや、仕事現場にまで情報収集して駆けつけます。そして、"同担拒否”という言葉もあります。同担=同じ担当、つまり好きな相手がかぶること。追っかけレベルであれば、ファン同士の連携は不可欠ですが、リア恋になると同じアイドルのファン=恋のライバルとなるので、“同担”は敵。

 最近、韓国系の地下アイドルのメンバーと会うことがありました。メジャーとはいえないけど、日本各地で開催するライブには100人以上のファンが押し掛けます。女の子の地下アイドル同様、ライブ後にはファンとの交流会があります。そのプレゼントで一番びっくりしたのは100万円が入った封筒だったそう。これはさすがに、丁重に返したそうだけど、リアコなファンは没入感が半端ありません。40代、50代も多いようで、経済力がある人もかなり増えているみたい。

 最近、気になっているサイトがあります。「numan」という“こだわり女子の異次元空間マガジン”というサイトです。「マンガやアニメ、ゲーム、ノベルや、またはそれを原作にした2.5次元舞台、ドラマ等をこよなく愛する女子に向けた情報を発信するメディア」(サイトの文面から要約)とのこと。リアルであろうが、非リアルであろうが、理想の男子に夢を見る女子の比率は、実感としても増えているイメージです。そのサイトにある用語集のコーナーが面白くて、勉強になります。例えば、「NHK」。最近お騒がせのN国党ではありません。JK用語です。“二の腕(N)を引っ張って(H)、キス(K)の略”です。壁ドン、顎クイ、股ドンに次ぐ、女子の妄想シーン♥。

 妄想の恋はとても甘美です。“彼”はわがまま言わないし、暴力も振るわない。彼氏・夫の面倒くささをわかっているからこそ、理想のアイドルに恋している。とても居心地のいい時間です。先ほどのリアコの友人は「恋が実らないってわかっているだけに一番苦しいんです」とぽつり。リアコをしているときは幸せだけど、叶わぬ恋はやはり辛いもの。しかし、彼女たちが恋に落ちるにふさわしい男子は、リアルにどのくらいいるのでしょう? 優良物件は既婚者だし、独身男子の中でちゃんと稼いで、性格がよくて、女子に優しくて、顔が好みの男子がどれだけ貴重なことか。非リアルの幸福を超えられるリアルな恋に出会える確率を考えたら、リアコたちの気持ちが痛いほどにわかります。ただ、妄想の恋から覚めるときのための助走をしていないと、理想男子に出会ったときの恋の始め方を忘れてしまいそう。そこは痛みも苦しみもある、本気の恋の実地訓練が必要かもしれませんね。


THIS MONTH'S CODE

#リアコ

 二次元キャラに恋するリアコもいたりして、こうなると何が現実で何がバーチャルか、もはやその境目が曖昧です。類似語“ガチ恋”。

#配信系

 YouTube、TikTok、SHOWROOMなどで配信しているアイドル。VTuberとして配信するバーチャルアイドルも増えている。

#numan

 日本語だけでなく、英語でも配信。異次元空間マガジンというだけに、2次元から2.5、3次元までオタク女子に特化した新メディア。



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