illustration: Shogo Sekine

新しい渋谷の歩き方《東京#CODE》


 昨年11月オープンしたての「渋谷スクランブルスクエア」、地上229メートルの「渋谷スカイ」の屋上からの眺めは圧巻。世界中から観光客が集まるスクランブル交差点を見下ろすこの場所は2020年代のスタートとしてふさわしい場所です。

 視線の先にはオリンピックのメイン会場、新国立競技場。あと数ヶ月に迫った開会式を想像し、すっかり様変わりした渋谷について過去の思い出が蘇ります。

 ちょっと昔話をしますと、私が大学生だった80年代当時、渋谷は「パルコ」と「西武」の街でした。当時セゾングループだった両社が創り上げた渋谷は、まさにカルチャーの街。公園通りには若者が渇望していたすべての栄養がありました。パルコでDCブランドを買い、WAVEで音楽を掘り、ミュージアムで現代アートに触れ、パルコ劇場で話題になり始めた劇団・夢の遊眠社の芝居を見て、ブックセンターでインディーズ誌を漁っていたのが私の原点。今みたいになんでもスマホで見つけられないから、渋谷が情報の源でした。そこで出会った数多くのカルチャー、人、光景は今も体に染みついています。90年代には“渋カジ”が生まれ、「SHIBUYA109」からギャルブームが生まれ、2000年頭くらいまで若者の街であった渋谷。ここ数年で公園通りから若者が激減しました。その起死回生を狙ったともいえる大改造。「渋谷ストリーム」に始まり、「渋谷スクランブルスクエア」、「渋谷パルコ」、「東急プラザ渋谷」。昨年までに大きな開発が立て続けに起きています。その中でも話題になったのが新生「渋谷パルコ」。

 渋谷のへそともいえるパルコの復活は往年のファンだけでなく、すべての世代を魅了しました。オープニングパーティではミレニアルズたちが押しかけ、日本ブランドの限定アイテムやポケモンセンターに列をなし、当時のパルコを知る人たちもファッションの殿堂の復活に大興奮。地下のレストラン街には昆虫食のレストランや、新宿2丁目のゲイバーに至るカオス感。間違いなく他にはないショッピングビルへと生まれ変わりました。

 一転、「東急プラザ渋谷」は40代アッパーをターゲットにHISの高級旅行ラウンジから終活をサポートするサロン、補聴器の専門店まで、グッと大人世代へ向けたサービスが揃った店づくりが特徴的。若者から、かつて若者だった人まで、すべてがミックスする渋谷自体がカオス。

 正直、もう商業施設はお腹いっぱい、という声も聞こえてきます。年代と年代の今では、そこに生きる人もテクノロジーも環境もライフスタイルもすべてが様変わり。人が目指す幸福の変化がこの街に起きている。新生パルコで感じたのは、とにかくいろんな人が交わっていたということ。普段会えない人とすれ違う場所。デジタル世界では経験できない、「未知に出会う楽しさ」はこういったリアルな場所の一番の強みです。東急プラザ渋谷でPOP-UPショップをしていた、《KEITA MARUYAMA》が手がける「丸山邸」で見つけた作家のお皿は、まさにここでしか出会えない逸品でした。

 出かけたくなる、楽しくなる、出会いを楽しむ。未知を探して。そんな渋谷の楽しみ方だけは、いつまでも幾つになっても失われないと信じています。

THIS MONTH'S CODE

#WAVE

当時レコードショップでありながらカルチャーを発信していたWAVE。時を経て渋谷パルコでグッズ販売とともに、WEBサイトhttps://wavetokyo.comでカルチャーを発信していく。

#東急プラザ渋谷

おすすめは17階にできたクラブラウンジ「CÉ LAVI」。シンガポールの同クラブが日本上陸。カフェも併設されて渋谷からの眺めを楽しめる。

#POP-UPショップ

現在は丸山邸のポップアップは終了。南青山の本店でも作家ものの陶器を取り扱っている。





この記事をシェアする

LATEST POSTS