来世ごと賭けた勝負に負けたからこんなになにもない風の星
じゃんけんは本当に運で決まるものだろうか。ときどきそんな風に考える。
私は、強い意志で勝てるものだと思ってしまっている。
じゃんけんには二通りある。みんながいつもやっている普通のじゃんけんと、「本気じゃんけん」。これは恐ろしい勝負で、あまり頻繁には使わないほうがいい。
絶対に負けられない場面では、何の手を出すかなど考えない。ただ相手のいる空間を見つめ、この先にもう決まった勝敗があり、そこで私は勝っていると思い込む。信じ切ったまま、心のままに手を出す。
このやり方で忘年会のじゃんけん大会に挑んだら、六十人の勝負を勝ち残り、結果は二位だった。五人での決勝で「さすがに負けるかも」と一瞬気を抜いた途端、一人に負けてしまったのだ。そこから気を入れ直して、なんとか準優勝に食い込んだ。
信じ切ると本当に勝ってしまうので、私はこのじゃんけんを恐れている。
何か、運の前借りのような、現在の自分以上の大きな存在に借りを作っている気がする。それは寿命とか生命力とか、そういう類いのものかもしれない。
……ってことがあってさ。と、飲み会で話した。じゃあやってみようか、と、軽いノリで三人と本気じゃんけんをしたら、なんとまた、全部勝ってしまった。
やばい。私の寿命、いまどれくらい使っちゃったんだろう。
岡本真帆(おかもと・まほ)
歌人・作家。1989年生まれ。高知県出身。2022年に第一歌集『水上バス浅草行き』(ナナロク社)、2024年に第二歌集『あかるい花束』(ナナロク社)を刊行。最新刊に、自身の好きなものを短歌とエッセイで表現した『落雷と祝福』(朝日新聞出版)がある。