サンフランシスコではロボットやデジタルツールが生活に溶け込んでいました。「Café X」は店内の中心にロボットアームが鎮座しています。お客さんはタブレットで飲み物をオーダー。細かな注文もOKです。順番がくると、オーダーしたお茶をロボットアームがつくり、丁寧にサーブしてくれます。また、無人コンビニとして話題になっている「amazon GO」では、アプリのQRコードをかざして店内に入り、ほしいものをピックアップして、最後はゲートをくぐって持ち帰るだけ。購入商品の決済はすべてアプリで完了です。ニューヨークの5番街にある「Nike House of Innovation 000」という旗艦店は、アプリ上で商品をピックアップしておくと、店内にあるロッカーに届いて、試着をし、欲しい商品を持ち帰るだけ。ここでも決済はすべてアプリで完結します。
前述のCafé Xの人に聞くと、「カフェで待たされるストレスもなく、スタッフは顧客とのコミュニケーションだけすればよくなってた」とか。これから人口が減り、労働力がなくなる時代に、ロボットが私たちの生活を助ける。そんなことが当たり前のように始まっています。
小売の世界では、「オンライン to オフライン」=「O2O」という言葉を使います。オンラインはデジタル(ECやアプリ)、オフラインはリアル店舗のこと。そして、さらに進んで最近言われているのが「OMO」という言葉です。デジタルがリアルを取り込む社会です。リアル>デジタルから、リアル<デジタルということですね。これを実感することがありました。
デジタル系アイドルに強い男子と話していたときのことです。彼自身、デジタル上のボカロやアニメオタク。「Twitterで裏垢のキャラがいくつもあるんですが、それはリアル社会とは全く別人格なんです。だからいつもネットとリアルで自由にキャラを使い分けているんですよね」と。職場で嫌なことがあっても、裏垢で別人格で毒を吐いてリフレッシュしたりするのだとか。「時々、どっちが本当の自分か分からなくなりますけどね(笑)」。なるほど、もうデジタルとリアルは境界がなくなっているようです。
年末の紅白歌合戦ではAI美空ひばりが「あれから」という秋元康プロデュースの曲を披露したり、「バーチャル紅白歌合戦」では有名VTuberとリアル歌手との歌合戦まで番組にしたり、NHKもかなり攻めています。先日放送された「ねほりんぱほりん」では「バ美肉おじさん」と呼ばれるボイスチェンジャーを使って女のコVTuberになりきるおじさんたちが登場。彼らはリアルでも女性言葉を使うようになったり、「可愛い」と言われることで優しくなったりするといいます。「デジタル上の人格でリアルが上書きされる」と話していた言葉が印象的でした。こうなると彼らの人格はリアルにあるのか、デジタルにあるのか分からなくなります。
この春からサービスがスタートする5Gの世界は、まさにこの境界線が溶ける時代です。今リアルに見ているものが実は仮想現実、バーチャルなのかもしれない、まさに映画『マトリックス』の世界。リアルが不幸でも、デジタルの中で幸福であればいい。そんなリア充ならぬ、デジ充な人たちが増えている。2020年は5G元年であり、デジ充元年でもあるようです。
THIS MONTH'S CODE
#Nike House of Innovation 000
2018年にオープンしたナイキの最新業態の店舗。最新のデジタル機材を使ったバスケットコートがあったり、アプリを使ってインスタントチェックアウトできたり、商品情報が見られたりと、次世代ストアのかたちとして必見。
#ねほりんぱほりん
もぐらになった山里亮太とYOUが、豚になった出演者から根掘り葉掘り、社会の裏事情を探るNHKの神番組。
#バ美肉おじさん
VRゴーグルをつけ、手元にはコントローラー。動きをセンサーで読み取り、アバターになりきってVTuberになれる。バ美肉おばさんも存在する。