この間、原宿のラフォーレ原宿の交差点を歩いておりました。平日の夕方です。そうしたらあることに気づいたのです。交差点を歩いている人の着ている服の色が、白、白、白、黒、紺。まったく”色“がなかったのです。これが新宿とかならまだ「そっかー」で済んだ話ですが、ここは原宿。個性ある人であふれている場所なのに、なんです。
コンビニでファッション雑誌の表紙を眺めても、その表紙の服は白ばかり。色や柄はなし。夏なのに!!タイトルも「白Tシャツ特集」が並びます。おっと、かなり保守的。ついでにお買い物に新宿ルミネをのぞいても、やっぱり白、白、白。柄はボーダーが精一杯。こうなるとどこのショップも一緒に見えてきます。これは女子に限った話ではありません。週末集まった会では、男子3名がまさかの白Tかぶり。こだわっていても、白は白。無難、安全、目立たない。そういえば千駄ケ谷に白Tだけ売っている専門店がオープンしました。安全な白で差別化。これが今の気分なのかもしれません。
そうなんです、気になっているのはこの”同調気分“なんです。目立つものを排除していった先の冒険をしない空気が気になっているんです。街を見回すとアッパーな世代の方が、派手な色や柄を着ているように思います。大阪のおばちゃん、ヒョウ柄最強説でしょうか?
先日の参院選では、10代に自民党支持が多かったこともひっかかっています。つまり、大多数の若者にとって今の日本は暮らしやすく、何も変化を求める必要がない、心地が良い場所なんだってこと。テレビの不倫問題報道などを見ていても、ちょっとでも社会規範にはずれた人を叩く不寛容さが、今の社会の窮屈さをつくっていると思います。人との違いを認めにくい世の中なのかもしれません。セレクトショップに、似たようなデザインが並んでいるのも、消費者が差別化を求めていないからなのかもしれません。
一方でこの秋のトレンドですが、海外のブランドはどこでも「盛って盛って、派手さ爆発!」なデザインがたくさん登場しています。新生GUCCIのデザイナー、アレッサンドロ・ミケーレの服はレースの上にヒョウの顔を刺繍して、チアリーダーのようなロゴをつけて、と派手さ山盛り!盛った服であふれたランウエイを見ていると、生きるパワーを感じます。最近インスタグラムで話題のマダム、ヤギエリコさんは、事業の借金や自身の病気を経て50代になって超派手なファッションに目覚めたそうです。今ではラグジュアリーブランドの上顧客。その個性的で派手なファッションでパーティの常連です。彼女のインスタを見ているとやっぱり人生は一度きり、今を楽しまなきゃ、と思うのです。
周りの空気を読んで生きても、新しいことは生み出しにくいと思います。せっかくの人生ですから、ここはちょっと派手に生きましょう。秋ものが並び始めたら、手始めに柄小物を買ってみてはいかがでしょうか? バッグや靴で冒険を始めて。また、キーカラーとしてはバーガンディー。赤が登場します。周りに合わせることに疲れてきたら、ちょっと色や柄を毎日のスタイルに加えれば、気分ががらっと変わるかもしれません。ファッションはあなたのものです。自由に生きましょう!
ぐんじ さゆみ
『ViVi』『GLAMOROUS』を経て、コンデナスト入社後『GQ JAPAN』編集長代理を務めた後、『VOGUEgirl』を創刊。2014年7月より『Numéro TOKYO』に参加。gumi-gumi主宰
THIS MONTH'S CODE
#白Tだけ売っている専門店
シロティ土曜日12:00-19:00(不定休)のみ営業という気まぐれな店なのにもかかわらず、毎週行列ができるほどのお店。住所・東京都渋谷区千駄ケ谷 2-3-5 1F
#10代に自民党支持が多かった
政党支持率で自民党が40%を超えていたという調査結果がある。全世代では38.2%。
#アレッサンドロ・ミケーレ
2015年よりGUCCIのデザイナーに就任。独自の世界観で今一番注目されている。
#ヤギエリコ
独創的なブランドファッションで業界騒然の@yagierikoさん。発売中の「NumeroTOKYO」でもインタビューを掲載しております。