最近はまっているNETFLIXオリジナルドラマがあります。『Black Mirror』というイギリスで制作されたドラマです。ここで描かれているのは近々未来です。人工知能や自動運転、VR、ロボットのある生活が描かれています。「ランク社会」という回では、SNSなどで獲得した"いいね"がその人のポイントになり、その数値で人生すべてが格付けされてしまうという内容で、あらゆるサービスがスマホ型端末で管理され、現実としてすぐにでも起こりうる恐怖が描かれています。去年はそういう意味で、私たちの生活がぐっと未来に近づいた年でありました。IoTといわれるテクノロジーですべてのことが解決される時代。子供の頃に夢見ていた空飛ぶ車も、話せる腕時計も宇宙ホテルも、もう現実のお話ですからね。
そんな中、昨年大ヒットした映画があります。『君の名は。』と『この世界の片隅に』です。前者は200億を稼ぎだし、ジブリ作品を抜くヒット。後者はクラウドファンディングで資金を集め、小規模上映ながら、日を追うごとに観客が満席になり、みんなが涙しました。そのヒットの秘密はSNSにあります。大宣伝をしなくても、誰かのSNSを見て映画館に足を運ぶ。それをつないでいるのはハッシュタグというテクノロジーがつくりだしたネットワークですが、その中に書かれているのは感動の言葉の数々。強く動かされた人の心がそこにあります。
このところ20代を中心に「エモい」という言葉が使われています。現代の魔法使いと呼ばれる落合陽一くんのTwitterにはこの言葉が頻繁にでてきます。ちょっと前は「やばい」でした。「やばい」がちょっと傍観者的に一歩下がっているのに対して、エモいはもっと感情的。その語源はもちろんemotional。感情的でうるっとくることを共有したい。無機質に思えるテクノロジー社会の裏で、こんなアナログな感情がヒットを生み出しているのです。
2017年はどんな年になるのか。ますますテクノロジー技術は私たちの生活を変えていきます。Amazonがシアトルで始めるスーパー「Amazon Go」にはレジもありません。また、Amazon Echoという筒型の端末は、話しかけるだけで商品が届いたり、タクシーを呼んでくれたり、あらゆるサービスが音声認識でできてしまうようになります。これは現実のお話。未来は簡単に私たちの生活に入り込んできます。その一方で多くの人が求めたのは、アナログの感動、まさに「エモい」ものです。過剰にあふれた情報の中で、私たちを引きつけるものは温かさや感情。技術やモノは死ぬ時にあなたを幸福にしてくれません。それよりも経験や記憶、感動をたくさん持っていることのほうが、ずっと優先順位が高いってことにみんな気づき始めたのではないのでしょうか?
今年、テクノロジーは止まる事なくあなたの生活の中に増えていくでしょう。しかし、同時にエモーショナルなものが流行していくのではないでしょうか。昨年末に広尾にオープンしたオーガニックスーパーBio c’ Bonなど、地球と身体に優しいオーニックの需要はますます増えていくはずです。生活に浸透していくテクノロジーと、感動と愛を与えるプライスレスなものたち。そのハイブリッドな生活が、2017年、私たちの未来予想図なのだと私は思うのです。
ぐんじさゆみ
『ViVi』『GLAMOROUS』を経て、コンデナスト入社後『GQ JAPAN』編集長代理を務めた後、『VOGUEgirl』を創刊。2014年7月より『Numéro TOKYO』に参加。gumi-gumi主宰
THIS MONTH'S CODE
#『Black Mirror』
イギリスで制作されたドラマ。21世紀版『世にも奇妙な物語』。
#クラウドファンディング
『この世界の片隅に』はMakuakeというクラウドファンディングを使って2000人以上から資金を集めた。
#Amazon Go & Amazon Echo
シアトルで試験的に始まる「Amazon Go」はスマホと位置情報などを使ってレジなしでモノが買えるスーパー。Echoは音声認識型端末で、これがくるとかなり未来感がある。
#Bio c’ Bon
ビオセボン。フランス発のおしゃれオーガニックスーパー。
#未来予想図
念のためですが、©ドリカム。