先日、並木橋にある友人の事務所に遊びに行きました。ユニークなデザインで有名な彼のオフィスには、いろんなおもちゃがたくさん並んでいます。その壁を一面埋め尽くすように並んでいたのがLPレコードでした。ジャケもかっこいい懐かしのLPレコード。その中に小泉今日子さんの1枚を発見しました。貴重な『ヤマトナデシコ七変化』のスペシャルバージョン。いやあ、上がりました。早速、彼がそのコレクションのために購入したレコードをDJブースでかけてもらいました。
キョンキョンに浸っていると、21歳の私のアシスタントちゃんが「えー、めっちゃかっこいいですね! 新鮮!」と食いついてきます。たぶん彼女のママ世代の時代の音楽です。平成生まれの彼女にとって、昭和歌謡は「新鮮!」となります。ママが鼻歌で歌っていたかもしれない歌。ちょっと懐かしさもあるけど、彼女にとってその音は今流れてくる新曲と変わらない感覚で聴こえているのでしょう。
歌詞もリズムも30年以上の時間差はあっても、古い、とは思わず、新しい!と捉える感覚。
最近10代、20代の子たちに昭和歌謡ブームが広がっています。モデルの水原希子ちゃんがインスタで中森明菜の「SOLITUDE」を上げているように、昭和歌謡、今きているんです。
そんな新しい昭和歌謡の一方で、懐かしい昭和歌謡も盛り上がっています。新宿に「ヤングマン」という歌謡バーがあります。ここはかつての『ザ・ベストテン!』や『夜のヒットスタジオ』などの貴重映像を流すお店。カラオケではありません。お客さんはテーブルにあるリクエストカードに記入して、お店の人に渡すというシステム。もちろん懐かしの映像が流れれば、みんな大合唱。カラオケボックスとは違って本人映像ですから、かなり盛り上がります。お客さんはやはり40代アッパー中心ですが、若い人たちも交じり合いながら盛り上がります。明菜に聖子にひろみ、秀樹、キャンディーズやピンク・レディーも! 私自身リアルにこの時代を生きてきた人間ですから、これは本当に涙ものです。
ここだけでなく、都内に一気にこういった昭和歌謡しばりのお店が増えてきたように思います。ある時、20代の女の子がユーミンの「中央フリーウェイ」を聴きながら、「私たちの世代には、こんな風に情景が浮かんでくるような音楽がないような気がします。みんな、"頑張って生きていこう"、とか、"好きだ"とか、そういう言葉が断片的で、心の風景ではなくって。だから昭和歌謡の世界が羨ましいです」と。
確かに。昭和世代の私たちの毎日には歌謡曲がありました。テレビでも歌番組が人気で、雑誌の付録には歌詞カード集がついていました。歌詞の比重がとても大きかったのだと思います。松本隆、阿久悠、阿木燿子。彼らの歌詞には大人の世界がありました。物語がありました。恋愛や友情、出会いや別れ。子どもの頃からそんな歌に囲まれ、かなり背伸びしていたんだと思います。
昭和歌謡のよさは、アナログ時代ならではの物語。それに「新しい、かっこいい!」と飛びつく20代も、過去を懐かしむ世代も2017年に同時に存在するのが今。YouTubeは過去を時差なく繋げるツールです。時空を超えて、いいものはいいと、ヴィンテージの服のように受ける昭和歌謡。歌いに行きたくないですか?
THIS MONTH'S CODE
#「ヤマトナデシコ七変化」
今年デビュー35周年を迎える小泉今日子さんによる1985年発表の代表作。5月17日には35周年記念のベストアルバムが発売になる。初回限定版は2冊のクロニクル本がついた超絶保存盤!
#「ヤングマン」
新宿3丁目にある昭和歌謡バー。フリードリンクの時間制でリクエストし放題。往年の方も若い方もみんなで合唱。
#ユーミンの「中央フリーウェイ」
1976年に発売されたLP『14番目の月』に収録された、荒井由実時代の一曲。この曲を流しながら中央高速で車デートをするのが当時の定番だった。
ぐんじさゆみ
『ViVi』『GLAMOROUS』を経て、コンデナスト入社後『GQ JAPAN』編集長代理を務めた後、『VOGUE girl』を創刊。2014年7月より『Numéro TOKYO』に参加。gumi-gumi主宰