illustration: Yurina Sato

東京の夜は #秘密のバーで《東京#CODE》


 みなさん、最近夜遊びしていますか? コロナ禍がもたらした変化に、「二次会が減った」という現象があります。会食でも友人との飲み会でも、一次会が終われば即解散。「二軒目どう?」がなくなりました。以前だったら24時をすぎてもご飯を食べられる店がありましたが、いまでは閉店時間が早まっていて、夜通し遊んでいたあのころがまるで幻のよう。一方で、夜の渋谷は路上で盛り上がるインバウンド客でいっぱい。銀座にある老舗のバーやクラブですら、観光客の姿がかなり目立ちます。コロナ禍以降、働き方も遊び方もすっかり変化しました。無理に飲みにいかなくてもいいし、体に負担をかけて遊び歩くよりも、健康的に、早めに帰宅、というのもわかる。

 職業柄、「最近面白い店ある?」とよく聞かれます。もちろん、麻布台ヒルズや、渋谷サクラステージと、新しい商業施設は増えていますが、私の友人たちが聞きたがっているのはそういうメジャーな場所ではなく、どちらかというとしっぽりとした、大人が行ける隠れ家的な秘密の場所です。

 先日、友人の誕生会をしました。女子会の後に行ったのは、虎屋銀座ビルの12階にオープンした「サンルイ・バー・バイ・ケイ」です。パリの三つ星シェフ、小林圭さんと日本の和菓子の老舗「とらや」による新しいスポットに、フランスのクリスタルメゾンの老舗「サンルイ」が加わるという贅沢な空間。入り口を入ってすぐ目に入るのは、サンルイのシャンデリアと和のテイストをミックスしたシックなインテリア。ここだけは外の喧騒から隔絶されるところも素敵。最近のいい店は“ちょっと隠れ家ちっく”がポイントです。

 また、ある日に友人が連れて行ってくれたのは、奥渋にある雑居ビル。外からはわからないけど、この小さなビルの中にバーや鉄板焼きの店などが何軒も入っています。どの店も、とても一見の客には開けられないようなシークレットな扉が特徴で、店内は10人も入ればいっぱいのカウンターが主流。まさに知る人ぞ知る、なお店たち。こういう店はなかなか人の紹介なしには入れませんが、品のよい雰囲気と質の高いメニューがうれしくて、いったん常連客になったら、居心地のよさは最高です。

 「最近オープンした小さなクラブがあるんだけど」と言われて行ったのは、中目黒の高架下にできた小箱のクラブです。以前レストランだったその場所は、30人も入ればいっぱいくらいの本当に小さな箱。その日は友人の友人がDJをしていて、仲間内でゆるーく集まっている感じが心地よい場所でした。大勢でわちゃわちゃより、ちょっと広めのリビング的な印象です。

 行きつけのゴールデン街のワインバーも最近すっかり観光客でいっぱいで、それはそれで悲しい。東京の大人が遊べる場所がなくなった、と嘆いていましたが、このような秘密の場所もちょっとずつ増えているように思います。慢性的なオーバーツーリズムである京都は、昔から「一見さんお断り」の風習がありますが、それは観光業を守りながら地元の大人が遊べる場所も確保しようという自衛策なのでしょう。東京も上手に観光客と付き合えるように、表と裏の遊び場がある。大人こそ秘密の隠れ家に潜む、そんな流れのようです。

THIS MONTH'S CODE

#「サンルイ・バー・バイ・ケイ」

同じ虎屋銀座ビルの11階には、小林シェフと「とらや」によるレストラン「エスプリ・セー・ケイ・ギンザ」が。バーは12階に。もちろん、使われているグラスはサンルイ製という豪華さ。

#奥渋

その名の通り、渋谷の奥。NHK放送センター近辺の神山町、富ヶ谷あたりのエリアを指す。

#中目黒の高架下にできた小箱のクラブ

今年3月にオープン。その名は「HVEN」(ヘイヴン)。日中は展示会やイベントを開催するなど、カルチャーの発信基地となっている。





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