福音館書店の『いやいやえん』(中川李枝子作、大村百合子絵)

【絵本に再び出会う】『いやいやえん』(上)子供が子供らしく生きる

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 今から50年以上も前に、一人の若い保母さん(現在は保育士)と子供たちの毎日の暮らしの中から生まれたお話があります。昭和37年に福音館書店から刊行された幼年童話『いやいやえん』(中川李枝子作、大村百合子絵)です。私が幼稚園教諭になったときから、子供たちに読み続けてきた一冊です。

 ここには、「ちゅーりっぷほいくえん」を舞台にした7つのお話が収められています。1つ目のお話は、ちゅーりっぷほいくえんと、登場人物の、しげるが紹介されます。

 ちゅーりっぷほいくえんには、子供たちが「なあんだ、かんたんなことばっかり!」という約束があります。4歳のしげるは、1日に17回もこの約束を忘れ「しげるちゃん!」と、いつも先生ににらまれてしまいます。約束忘れとは…

 《1.かおを、あらわないできました。2.ゆびを、しゃぶっていました。3.はなくそを、なめました…14.おべんとうのとき、わざと、にんじんをおとしました…》

 初めは神妙な顔で聞いていた子供たちですが、途中からゲラゲラと笑い出します。そして、「あれ? 〇〇ちゃんみたいだね」「ちがうよ、ぼく、そんなことしないもん」「△△君もやってるじゃん」と言い合うのです。

 しげるの姿を面白がる子、ほっとする子、全く困ったもんだというような表情を浮かべる子とさまざまですが、いつの時代も、子供たちは皆すぐに、しげるを好きになります。なぜなら、しげるは自分たちによく似た“子供”だからです。

 子供だけではありません。子供にせがまれて家で読み始めたお母さんが、「何だか、ほっとしちゃった。うちの子、しげるほど言うことを聞かなくないもの。でも、こういう子、私の子供時代もいたよね。憎めないっていうか、かわいいっていうか…」。

 このお話は、時代は変わっても、子供の本質は変わらないことを教えてくれます。そして、『いやいやえん』には、保母として子供とともに生き、子供の面白さやかわいさを心から味わい続ける、作者、中川さんの子供への深い愛情と、昔は誰もが子供だった大人への大切なメッセージを感じることができます。

 さて、この本のタイトルがなぜ『いやいやえん』なのか、その理由は次回のお楽しみ、お楽しみ。(国立音楽大教授 林浩子)

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