女性のココロとカラダのケアを考え、よりよい未来につなげる「Fem Care Project 」。2021年から始まった本連載も今回が最終回です。本誌編集長・日下紗代子が、その歩みを振り返ります。
3月8日は「国際女性デー」でした。20世紀初頭に欧米で起きた労働運動がルーツとも言われ、国際婦人年の1975年に国連で提唱、77年に国連総会で正式に定められた記念日です。近年では、シンボルフラワーである「ミモザ」の日としても知られ、街中に黄色があふれることも。メトロポリターナでは、2021年からフェムケアプロジェクトを開始し、毎年3月は大きなイベントを行ってきました。今号では、表紙のリターナちゃんが枠から飛び出し、何かアクションを起こそうとしている様子が描かれています。
フェムケアプロジェクトの始まりは、2021年の6月号「まずは知りたいフェムテック」。初めてメトロポリターナでフェムテック特集を行ったことがきっかけでした。当時は、月経カップや吸水ショーツといった聞きなれないアイテムが日本国内で話題に上ってきたころ。それと同時に、経済界では、女性の生理に関連した労働損失が具体的な数字として取り上げられ、政府の女性版骨太の方針にも「フェムテックの推進」が入り、生理や更年期障害など、これまで女性個人の課題とされ見過ごされてきたことが、社会の課題として認識されるようになってきました。私たちが特集を通じてその確かなニーズを確信したのは、読者の皆様の声でした。生理の悩みについて「自分だけではないことがわかって安心した」という共感や、これまでのつらい経験を後世に残したくないという思い。ある男性の方からは、「娘にとって必要な情報だった」と、自身の身近な人に思いを向けて理解を深めることの大切さを教えてもらいました。このことから、女性のみならず、性別や年齢を超えた相互理解を促すことをプロジェクトの根幹に置きました。社会全体が自分ごと化できるように、産経新聞社全体で活動を進め、月日を重ねるごとに、時代の変化に合わせ、伝える言葉も変化していきました。
“対話”することの
難しさを超えて
今年のコンセプトは「半径5mの世界を変える!」です。昨年の「知るって、やさしい一歩!」では、自分自身や周囲の人の心身の健康を知ることが、やさしい社会への一歩につながることをテーマに誌面を展開していきました。今年はその一歩先まで後押ししていきたい。手に取り読んでくださった方々の少しでもポジティブなワンアクションにつながることを願い企画しました。世の中には、私たちが日々抱えている悩みやモヤモヤを解消してくれるサービスや仕組み、アイデアが数多く存在しています。まだ出会えていないだけで、そのきっかけは、求めれば、少しずつ手に入る時代になってきています。だからこそ、この「求めれば」がじつはものすごく大事なことなのではないかと最近よく思います。
自分の半径5mの世界をどう変えたいのか。子供を産みたいのか、子育てをしたいのか。キャリアをどう積んでいきたいのか、人生を誰と過ごしたいのか。自身のココロとカラダに耳を傾け、どうありたいかを問う。自分にとっての幸せとは何かを考え、言葉にしていくことは、何かを選択する前に必ず必要なプロセスなんだと。そのことが、じつは自分のみならず、自身が所属する組織や社会との“対話”にも大きく影響するということを、この活動を通じて感じています。
「トラハブ」の取り組みは、まさにその“対話”の重要性を仮説に、対話を生み出すための仕組みづくりやテクノロジーの活用アイデアを考え体感していく実証実験の場でもあります。相手の事情やバックグラウンドを知らないことによる、バイアスやディスコミュニケーションが少しずつ世の中から減っていったなら。今年3月8日の産経新聞のフルラッピング紙面に掲載したメッセージ「話すことから。動くことから。景色は変えることができるんだ。」は、そんな思いから生まれた言葉です。
違いを超えて分かち合う難しさを、ひとりひとりの小さなアクションで乗り越えていく。私たちはそんな世界に希望を持っています。最近、ぐるぐるした悩みを友人の勧めでChatGPTにぶつけてみたら、冷静かつ多様な視点のアドバイスをもらえ、やるべきアクションが整理されました。手段は意外にも身近なところにあったりします。つまずいても、希望をもって求めれば、きっと糸口が見つかるはず。フェムトークは今回で終わりますが、フェムケアプロジェクトはさらなる活動を続けていきますので、これからもよろしくお願いいたします!
3月8日付の産経新聞は朝刊の外側を包み込むラッピング仕様でメッセージ広告を掲載した。年齢や性別、バックグラウンドが異なっていても「花火を見る」という共通の願いを叶えるためのそれれぞれのアクションを表現している。

メトロポリターナ編集長
日下紗代子
3年半、ありがとうございました!
Fem Care Project
「フェムケアプロジェクト」は、産経新聞社が主催する、女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来につなげるプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方について情報発信をしながら考えていく。