フェムテックイベントが目白押しだった2022年10月。メトロポリターナ編集部も、さまざまなイベントに足を運び、市場の盛り上がりを体感してきました。「女性たちをエンパワーメントしたい!」という出展者の思いがあふれる空間で、ひとりの女性としても、たくさんの勇気をもらった編集部員が、特に気になったプロダクトやサービス、ワークショップなどをピックアップしてお届けします。
(文:メトロポリターナ スタッフライター 篠原那美)
「フェムテック元年」と呼ばれた2020年から2年。当初スタートアップを中心に始まった国内フェムテック市場は、昨年「吸水ショーツ」の人気に火がつき、認知が一気に広がるきっかけをつくった。そしてこの秋、開催されたフェムテックイベントでは、誰もが知る大手企業が、新サービスを携えて続々と参入。「流行に敏感な若者だけのモノ」というフェムテックのイメージは薄まり、より一般的に、より身近な生活圏に、フェムテックがぐっと近づいた印象を受けた。
その象徴が「”あったらいいな”をカタチにする」のフレーズでおなじみの「小林製薬」の出展だ。今年初開催となった「Femtech Tokyo」(10月20~22日、東京ビックサイトで開催)でも、大勢の人の関心を集めていた。個性的なCMが広く消費者にも知られている老舗製薬会社が、なぜいま、フェムテックイベントに参加したのか。話を聞きにブースを訪ねた。
■初潮から閉経後までをカバーする豊富なラインナップ
まず目を引いたのは、ブースの柱に飾られた巨大なパネル。ドラッグストアの商品棚に見立てたそれには、小林製薬の女性向け商品が、お悩み別にずらりと並ぶ。普段ドラッグストアで目にするときは、内服薬、塗り薬、生理用品、雑貨など売り場ごとに点在している品々。こうして眺めてみると、女性の多様な悩みに対応する種類の多さに驚かされる。展示の工夫は床にもあった。小学5年生の思春期の入り口から、閉経を迎えた後のシニア世代まで、各世代の困りごとを〝人生すごろく〟のようにして紹介していた。
広報の樋口亜由美さんと、マーケティングに携わる白石千夏さんに、出展の経緯や展示の狙いについて話を聞いた。
――フェムテックイベントに出展したわけは?
樋口さん「実は『フェムテック』という言葉が生まれる前から、ずっと女性の悩みの解決に向き合ってきた会社だということを、知ってもらいたいと思いました。当社はもともと、広く気づかれていない困りごとを見つけて、お助けする商品を作るのが得意な会社です。そうした企業の姿勢のなかで、図らずも女性の困りごとに寄り添ってきた歴史があります。しかも、その困りごとというのは、他人に相談しにくい、タブー視されているものでした。デリケートゾーンのかゆみだったり、おりものケアだったり、更年期障害だったり。そんな誰にも相談できない困りごとを、テレビCMを使って、『困っているのはあなただけではありませんよ』と訴え続けてきた。がまんせずに、まずは一度、小林製薬を頼ってもらえたらうれしいです」
――女性はライフステージごとに、悩みも変化していくことが、床の説明パネルでもよくわかりますね。
白石さん「個人差はありますが、初潮が始まる少し前から、おりものの症状が始まるといわれています。そこには『サラサーティ』シリーズがお役に立てます。おりもの用シートの使い方を、親子で話しながら、身体のケアを学ぶ最初の一歩にしてもらいたいですね。おりものについては、においの悩みも女性たちの深い悩みの一つです。ただ、シートだけでは根本的な解決にはなりません。生理やストレスで膣内環境が乱れると、膣内の悪玉菌が優位となり、においの元となります。膣の自浄作用として分泌されるおりものの働きを助ける観点から、サラサーティでは新たに膣内用の洗浄剤も開発し、この春から店頭に並んでいます」
――生理が始まると、女の人は女性ホルモンの波にさらされます。それは、10代の思春期から、20~30代の性成熟期、40代以降は更年期、閉経後のシニア期と、それぞれのライフステージで、異なる症状に悩まされますね。
白石さん「女性の更年期に向けた薬として広く知られている『命の母A』は、明治時代に誕生した歴史ある女性保健薬です。2005年に当社が販売権を獲得して以来、女性のライフステージに合わせてバリエーションを増やしてきました。生理に伴う症状に向けた『命の母ホワイト』に加え、今年10月からは更年期向けの『命の母A』を〝卒業〟した閉経後の女性のための『命の母アクティブ』という商品の販売もスタートしました。女性ホルモンの分泌が低くなった後の筋力低下や骨を心配する女性たちの声に応えようと、開発を進めてきたものです」
――ここ数年のフェムテック・フェムケアへの意識の高まりとともに、デリケートゾーンケアも注目が高まっていますが、「デリケートゾーン」という言葉を最初に使ったのも、小林製薬と聞きました。
樋口さん「『フェミニーナ軟膏』というかゆみに対処する塗り薬がきっかけです。生理の時にナプキンがこすれたりして、かゆみを伴うことは多いですが、やはり誰にも相談できないという悩みを抱える女性が多かった。かゆみがあるのは、あなただけではないですよ、恥ずかしいことではないですよ、といったメッセージを伝え続け、我慢せずに、気軽に頼ってもらえる存在でありたいです」
白石さん「リップクリームのように、ポーチに気軽に入れて持ち歩いてもらえると嬉しいですね。デリケートゾーンに向き合うことは、自分の健康に向き合うこと。そうした認識が広がっていってほしいなと願います」