アートデュオ「米谷健+ジュリア」が、私たちに見えているようで見えていないお金と、社会そのものについての真価を問う展覧会「はだかの王様」が、新宿区市谷田町のMIZUMA ART GALLERYで開催されています。
昨年の茨城県北芸術祭で、ウランガラスで作られたシャンデリアの作品《クリスタルパレス》を展示するなど国内外から注目を集めている米谷健+ジュリア。本展では一変し、〝お金〟をテーマにした新作5点を発表しています。
会場でまず目を引くのは、アンデルセン童話「裸の王様」に基づいて、現行の千円札などを使い制作されたインスタレーション《はだかの王様 The Emperor’s New Clothes》。野口英世の肖像が描かれた千円札約1000枚をミシンで縫い合わせ、天皇の束帯に作り上げました。
紙幣から千円札を選んだ理由は、野口英世が正面を見ていて、作品を観る者が「観られている」と感じることを狙ったことと、千円札の縦:横が1:2で、成形しやすいからだそうです。
《現ナマ Hard Cash (Gennama)》は、作家二人が京都府南丹市で、無除草剤、無農薬、無化学肥料で栽培し、昨年秋に収穫した米を俵詰めにした作品。江戸時代に給料のことを「生(しょう)」と言い、現物支給の米や魚など意味するようになり、これが現ナマの語源になったことにインスパイアされて制作されました。
《景気刺激策 Stimulus Package》は、大きさの違う20枚の男性用パンツで構成。豪州の下着メーカーBonds社製のパンツに主要20カ国・地域(G20)の各国旗が刺繍され、パンツのサイズは、その国の債務残高(対GDP)によって異なります。ちなみに、最も大きなパンツには日の丸が縫い付けられています。
Bonds社のロゴは「国債」を連想させ、Stimulus=股間への刺激、Packageには、「タイトなパンツを履いて浮き彫りになった男性の股間」の意味もあることから、なかなか味わい深い作品となっています。
「紙幣がいつ、紙切れ一枚になってもおかしくない」とも言われる負債大国の日本。元外為ブローカーと元歴史学者という経歴を持つ彼らの作品から、まさに今起っている〝お金〟の変容を感じてください。
米谷健+ジュリア「はだかの王様」
会場:MIZUMA ART GALLERY(新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2F)
開催期間:3月25日(土)まで
開館時間:11:00~19:00
休廊日:日曜・月曜・祝日
入場無料