さくらんぼや毛糸、蝶など身近な静物をモチーフとし、フランスをはじめ多くの国で高い評価を受けている版画家 浜口陽三(1909-2000年)の銅版画50点と、多くの詩人たちと仕事をしてきた編集者 金井ゆり子氏の選んだ詩や短歌、俳句、落語など、さまざまな「ことば」を並べて展示する秋の浜口陽三展〈日々ぐるぐる 静物と30の「ことば」〉が、中央区日本橋蛎殻町のミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションで開催されています。
リトグラフ「びんとさくらんぼ」(1971年)には、立原道造の詩「僕は:僕は 背が高い 頭の上にすぐ空がある そのせいか 夕方が早い!」(『立原道造全集2』筑摩書房)。カラーメゾチント「1/4のレモン」(76年)には、山崎方代の短歌、メゾチント「顔」には、顔遊びうた「あァがり目 さァがり目 ぐるりとまわって ねェこの目」が組み合わされています。
「1/4のレモン」 1976年 カラーメゾチント 15.5×15.3㎝
「顔」 1952年 メゾチント 23.5 ×17.4㎝
このほか、くどうなおこの詩「ばらの初夏」やジュール・ルナールの詩集『博物誌』(岸田國士訳)の一節、堀口大学の詩「海の二階」などの「ことば」が並び、これらの「ことば」によって明るく輝いたり、モチーフがつぶやき始めたりと、浜口作品の変化を楽しめます。また、銅版画によってニュアンスが変化する「ことば」にも驚かされます。
会場では、浜口の手掛けた装丁類や使用した道具なども観ることができます。美術好きにも文学好きにもお薦めの展覧会です。11月27日まで。
「パリの屋根」 1956年 カラーメゾチント 18.3 ×18.4㎝
日々ぐるぐる 静物と30の「ことば」
会場:中央区日本橋蛎殻町1-35-7 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション
開館時間:平日 11:00~17:00/土・日・祝日 10:00~17:00(最終入館16:30まで) 会期中、第1・3金曜日は20:00まで
休館日:月曜日(10月10日は開館)、10月11日、10月16日
入館料:大人600円/大学・高校生400円/中学生以下 無料