子供の健やかな成長を願って飾る雛人形。平安時代に、水辺で身を清め災いを落とす中国の習慣が日本に伝わったことに由来し、3月3日に、貴族らが「ひとがた」を作り、自分の身代わりとして川に流して、無病息災を願ったことが起源とされています。
今年で8回目を迎える、全国各地の雛人形を紹介する展覧会「百段雛祭り」が、目黒雅叙園(目黒区下目黒)で開催されています。今回は、九州7県内の12地域から出品された1000点を超える雛人形が、雅叙園内の都指定有形文化財「百段階段」の途中にある7つの部屋に飾られています。
見どころの一つは、NHKの連続ドラマでも取り上げられた「赤毛のアン」の翻訳者 村岡花子やその友人である歌人 柳原白蓮の雛人形。村岡が娘のために買い求めた雛人形や道具、白蓮が大切にしていた有職雛(ゆうそくびな)と六歌仙の人形が、「草丘の間」(そうきゅうのま)に飾られています。有職雛とは公家の装束を忠実に再現したもので、江戸時代中期以降、上流階級に愛されてきました。白蓮のものは1837年(天保9)製で、頭は京作りで腕や足が動くようになっており、衣装の着脱ができます。
また、「漁樵の間」(ぎょしょうのま)では、福岡県飯塚市にある、白蓮の元夫である九州の炭鉱王 伊藤伝右衛門の旧宅で毎年行われている、街の雛祭りイベントの飾りを再現。約800体の「座敷雛」が展示されています。「雛が見た日本の祭り」と題し、京都の葵祭の行列、青森のねぶた祭り、九州の博多山笠など日本各地の祭りが雛人形で表現され、圧巻の光景が広がります。
大正~昭和時代に活躍した翻訳家、村岡花子の愛した雛人形(東京)
「星光の間」には、鹿児島県の伝統工芸品である薩摩切子で男雛、女雛の一対が作られている「薩摩切子の雛人形」が展示してあり、赤と紺の色合いの美しさや細工の緻密さに目を奪われます。この部屋には、大分県の藩医の家に伝わる、上を向いている珍しい古今雛や商家の享保雛も飾られています。
日本画と建築の美しさを感じる百段階段を上りながら、さまざまな様式のお雛様を味わいに出かけてみませんか。
百段雛まつり 九州雛紀行Ⅱ
会場:目黑雅叙園(目黒区下目黑1-8-1)百段階段
開催期間:3月12日まで、会期中無休
開催時間:午前10時~午後5時(最終入館午後4時30分)
入場料:一般1500円/学生800円/小学生以下 無料
展覧会HP http://www.megurogajoen.co.jp/event/hinamaturi