2017年に初演、2018年に再演され、大盛況を博した人気ミュージカル「魔女の宅急便」が、3年ぶりに再々演を迎える。新たなキャストで上演されるミュージカルへの期待、原作に込めた思いなどについて、原作者の角野栄子さんに話を聞いた。
邪気を吹き飛ばすような
魔法を使って楽しくてエネルギーが湧いてくるような
ミュージカルになったらいいですね
幼児童文学『魔女の宅急便』は、13歳の少女キキが、親もとを離れ相棒である黒猫のジジと一緒に魔女修行の旅に出る物語。第1巻の発行は1985年で、スピンオフ作品を含めると、いままでに8巻が刊行されている。この人気シリーズのミュージカルが、3月から再々演される。再々演の知らせは 、とてもうれしかったという原作者の角野栄子さん。その人気の理由についてたずねると、劇場空間だからこそのリアリティにあるのではないかという。
「主人公と同じ年頃の人たちも、そこを過ぎた人たちも、憧れを抱いている子どもたちにとっても 、現実と全くかけ離れた話ではなくて、すぐ近くにいる人たちの話として、つまり自分の問題として も受け取れるという要素が、このミュージカルにはあると思います。ミュージカルというのは、言葉や音などの空気の波動みたいなものが舞台の上から客席に伝わってきますよね。そうすると、見ている自分の身体も一緒になって舞台の上にいるような感じになれるんです」
じつは、ミュージカル好きな角野さん。あのブロードウェイの名作「マイ・フェア・レディ」の初演も、ニューヨークで見たという。だからこそ、自分の作品のミュージカル化には、とても心を躍ら せたという 。
「1993年に蜷川幸雄さんの演出で舞台化され、それから何年かたって、2017年に新しいミュージカル版ができました。若い方たちが演じてくださるというので、期待は高かったですね。役の年齢に近い、若い世代が演じる意味は大きいと思います」
今回キキ役でミュージカルに初挑戦する井上音生さんも、トンボ役を演じるジャニーズJr.の「美少年」の那須雄登さんも、ともに10代だ。角野さんは、彼らがどんな演技をしてくれるのか、期待を募らせているという。
「いまは大変なときです。若い2人が、こんな世の中を楽しませ明るい気持ちにするんだという自覚 を持って、精一杯元気にやってほしいですね。一生懸命にやることも大事ですが、観客に喜んでもら いたいという気持ちが、今回はとくに大切。このコロナ禍の時代に、"物語 "というものは、はつらつとしていなくてはいけないと思うんです。だからこそ、舞台をつくられる方たち自身がまず楽しんで、邪気を吹き飛ばすような魔法をぜひ使っていただきたい(笑)。エネルギーが湧いてくるようなミュージカルをつくっていただけたらいいですね」
魔法は誰でも使える。楽しみ喜び、好きなことを突き詰めていけば、それがやがてその人の魔法のようになる。そう角野さんは考えているという 。
「大切なのは、好奇心と想像力。それから冒険心。それがクリエイションとつながって、魔法が生まれると私は思っています」
空飛ぶほうきは、誰の心のなかにもある。角野さんのその思いを、ミュージカル『 魔女の宅急便』からぜひ感じ取ってほしい。
PROFILE
角野栄子
1935年1月1日生まれ、東京都出身。早稲田大学卒業後、2年間ブラジルへ渡り、1970年頃より絵本 ・童話の創作を始める。『ズボン船長さんの話 』で旺文社児童文学賞、『魔女の宅急便』で野間児童文芸賞、小学館文学賞などを受賞。2018年に国際アンデルセン賞作家賞を受賞。250を超える作 品があり、世界中で翻訳されている

ミュージカル
「魔女の宅急便」
会期:3月25日(木)〜28日(日)
会場:新国立劇場 中劇場
出演:井上音生、那須雄登(美少年/ ジャニーズJr.)、生田智子、横山だいすけ、藤原一裕(ライセンス)、白羽ゆり 他
料金:1万500円
3月13日(土)チケット発売。 詳しくは公式HPへ
http://www.musical-majotaku.jp