今月号のオギノマは特集内に引っ越しての拡大版。 美容賢者の齋藤薫さんに、小木さんが8つの質問を投げかけます。 美しさのあり方って、これからどう変わるのでしょう?
《Guest》
美容ジャーナリスト 齋藤 薫(さいとう かおる)さん
女性誌編集者を経て美容ジャーナリストに。美容雑誌をはじめとする女性誌において多数の連載エッセイを持ち、記事の企画・執筆から商品開発など幅広いフィールドで活躍する美容賢者。 美しさの深層へと切り込むその言葉に、ファンも多い
《Presenter》
コスメキッチンディレクター 小木 充(おぎ みつる)
マッシュビューティーラボ副社長。ナチュラル&オーガニックコスメを扱うショップ「コスメキッチン」の仕掛人として、世界中を飛び回る。齋藤さんへの末広がりな八つの質問。これをすべて読めば、きっといいことあるはずです!
Question 01:
自粛期間中はどのように過ごしていましたか?
小木:僕も緊急事態宣言後は、在宅ワークでした。自粛期間中は全店閉鎖という時期もあったので、我々なりに考えてインスタライブなどのオンラインでの発信を通じて、オーガニックの魅力をより深掘りして伝えることに力を注いでいました。その結果、フィジカルな接客に引けを取らない体験を届けることができたと思っています。自分たちなりのお客様とのコミュニケーション方法を模索し、コスメキッチンは新たな地平にたどりつけました。齋藤さんは、自粛期間中どのように過ごし、どんな発見がありましたか?
齋藤:小木さんも、なんと在宅でいらしたのですね。いつも世界中を忙しく飛び回っていらっしゃる小木さんですから、ちょっと想像するのが難しいほど(笑)。でも、リモートでしかできないことを次々発見されるのは小木さんらしく、すばらしいと思います。もちろん 私もほとんど外出せずに家におりましたが、もともと私は在宅で仕事をすることが多いので、大きな変化はなく。でもやはり家族が家にいるということで、よくも悪くも日常なのに非日常という不思議な時間でした。食事を見直したり部屋の模様替えをしたり、自分回帰とともに、自宅回帰をしましたね。
Question 02:
この時期によさを再発見したアイテムはありますか?
小木:家で過ごす時間が長くなり、たとえば ホームフレグランスやバスアイテム、食について見直す機会が多くなったと思います。少しでも明るく前向きに過ごすために、こんな時期に、あらためてよさを再発見したアイテムはありますか?
齋藤:どうしても運動不足になりがちなので、エアロバイクとか、足用のEMSの機器などを買いました。思い切って断捨離もしましたので、結果としてものすごく体を動かし、本来のゴールデンウィークよりも毎日ヘトヘトだったりして。その分、癒やしのフラワーエッセンスやルームフレグランスにはずいぶんお世話になりました。バスタイムもバスオイルやバスソルト、とっておきのデッドシーを使ったり、体を動かすほどに内的美容の必要性を感じる毎日でした。家にいる時間と正比例して、そういうものに手が伸び、自分自身に対して手厚くなりますね。発見でした。
Question 03:
リモートワークで気をつけていることはありますか?
小木:オンライン会議など、画面を通じて人と会う機会が増えました。でも、オンラインだと意外とみんな身だしなみに気を使ってないんですよね(笑)。ディスプレイ越しの印象って重要です。とくにアップで見られてしまう「顔」のお手入れは、リモートワークだからこそ手を抜けないなと思いました。リモートワークにおいて気をつける美容法や、オススメのアイテムがあればぜひ教えてください。
齋藤:確かに最初は、どうせちゃんとは映らないだろうからと、たかをくくっ て、眼鏡をかけてごまかしたりしていましたが、実は肌の調子もメイクもすごくはっきり映ることに途中で気づき、何より自分の姿も画面に映るので、期せずして客観的に自分を見せられることになる。すると自分はこん な顔してしゃべるのだとか、こんなふうに見えてしまうのだとか、いろいろなことが気になってきちゃって、次第にきちんと準備して会議に臨まざるを得なくなりました。ただしっかりメイクも不自然なので、色はあまり使 わずに、ちゃんと艶やかに元気に見えるよう、ハイライトを上手に使うのが、 オンラインのナチュラルメイクの鍵といえるかもしれません。
Question 04:
アフターコロナ、メイクは変わると思いますか?
小木:マスクをすることを前提にすると、メイクの仕方も変わっていくのかなと思います。 たとえばアイメイク。ブラック系の強めのアイラインよりも、カラフルなもののほうが、マスクとの相性もよくて、人気が出てきそうな雰囲気を感じます。メイクにおけるアフターコロナのトレンド予測のようなものがあれば、ぜひ教えてください。
齋藤:皮肉なことにこの秋冬は、口紅の新製品がとても多く、メイク界にはそれなりの戸惑いも見られますが、もちろん主役はアイメイク。眉なども目立ってくるので、まずは丁寧なアイメイクを、という提案になりますが、マスクをしているとそれだけで表情が暗く見えるから、アイメイクが強めのダーク系だと余計に暗く見えて損。やわらかくやさしい印象のアイメイクであるべきです。小木さんのおっしゃる通り、明るい色をふんわり纏うようなパウダーメイクがベストなのかもしれません。強いラインよりも丁寧にカールしてマスカラを塗ってといったふうに、自然な立体感を強調するようなメイクですね。
Question 05:
“本当に必要なものを選ぶ” ために大切なこととは?
小木:昨年あたりから一気に加速したサステナブルへの意識の高まり。オーガニックとサステナブルは、もちろん切り離せない関係なので、この流れはとても喜ばしいことです。ラグジュアリーブランドのコスメも、その辺の意識が高まっていますよね。そうなると、オーガニックとラグジュアリーの境界線は今後ますます薄くなり、消費者もフラットな目線で、"本当にいいものや必要なものを選ぶ”ようになる。この流れは、コロナの影響でより強まるはず。ただ、膨大な商品の中から選ぶには、知識や審美眼が必要です。そのセンスを磨くために、どのようなことを心がければいいと思いますか?
齋藤:いまこそ、その商品にある背景を知るべきときなのかもしれませんよね。一見同じ ように見えるオイルも、どんな会社がどのようにつくったかで、なんだか印象も変わってくる。そういうことをいままで以上にちゃんと知るべきときなのだと思います。それを知ると、きっとお手入れの仕方だって変わってくるはずです。共感できる考え方を持ったブランドのものを選ぶことが、結果的に自分の美しさにもつながってくるはずなのです。やはりコロナ禍によって物事の本質を見つめなければと いう意識が高まっているいまこそ、化粧品もそれをつくる人の姿勢をちゃんと見極めなければ。間違いなくいまそういう時代ですよね。
Question 06:
これからのリアル店舗の必要性とは?
小木:コスメはフィジカルに体験してから購入したいもの。とくにオーガニックは、試してみないとわからないスペック以上の魅力があるので、リアル店舗の価値は決してなくならない。ただ、そのあり方は変わっていくはず。ここでも本当に必要なものだけが、より価値ある存在になっていく。つまりフィジカルであることの付加価値が問われる時代です。だから店頭での購買体験も、もっとクオリティの高いものにしていきたいと思っています。 齋藤さんは、今後のリアル店舗のあり方について、どんな姿を予測しますか?
齋藤:コスメキッチンは今回オンラインに力を入れたら、売り上げがとても伸びたと聞きました。やはり一方でオンラインを望んでいた人もいるのでしょうね。テレワークはもちろん、すべてを元に戻してしまうのは、やはり建設的ではないのかも。全く見当違いかもしれませんけれど、マッチングアプリみたいに、自分が欲しいもの、自分の悩み、生き方のテーマ、 いろんなプロフィールを打ち込むと、おすすめしたい商品がばーっと出てきたりするスタイルが楽しそう。システムづくりは大変ですけれど、その分それはもう1つの接客ですよね。 ナチュラル&オーガニックだからこそ、お互い感性の部分でマッチングさせることが可能なのではないでしょうか。ちょっと面白そうだし、占い感覚でお買い物できたら楽しい!
Question 07:
マスクをしても美しい人とは? 新しい美の基準とは?
小木:本質的な美しさが、より評価されていくような気がします。たとえばサステナブルへの意識の高さだったり、社会に対する責任感があるといったようなことだったり、外見だけではなく内面的なあり方、内側からの輝きのような美しさが、より存在感を増していく気がしています。齋藤さんが考える、これからの時代の"美しい人"の基準といったものがあれば教えてください。
齋藤:全くおっしゃる通りだと思います。端的に言えば、いよいよエシカルな女性が美しい時代、そういうことでしょうか。最近、女優やモデルといった人たちにも、政治的なことに勇気を持って意見を言う人が増えていますよね。 海外では当たり前のこと。素晴らしいことだと思います。影響力がある人たちだからこそ声を上げてほしい。日本人ももっと大きな意味の正義感を形にすべきだと思うのです。ちょっと口幅ったいけれど、世の中をよくしていきたいという純粋な気持ちを持つことが、これからの美しい人の絶対条件になるはず、というか、そうなってほしいです。美容はどうしても独りよがりのものになりがちだからこそ、一方でそういう意識を持っていることが大切だと思うんですね。
Question 08:
私たちは、これからどう過ごしていけばいいのでしょう?
小木:最後の質問です。というかお願いです。コロナは、仕事にプライベートにと、私たちの生活に大きな影響を与えています。なかには、いろいろと参ってしまう方もいるかと思います。そんな方たちに向けて、何かアドバイスをいただけますか?
齋藤:まさに突然予想もしなかった事態になって、不安になったり人恋しくなったりした人もいたはず。でもその一方で、不思議に心が落ち着いていて、穏やかに新しい季節を迎える人もいるのかもしれません。これまでは、誰にとっても日常がフルスピードで動いてきたから、やりたいことができないまま、思っている方向に進めなかったり、いつの間にか自分がイメージしていた生活とは違ってきてしまっている人も多いはず。いまそれをリセットして、生き方を正す絶好のチャンスだと思うのです。断捨離するのも1つだけれど、そうやって自分の暮らしを一度ゼロに戻して、何かを本気でやり 直してみてはどうでしょう。まさにいましかできないこと。ぜひ前向きな気持ちで、始めてみてください。それも幸せの準備と考えて。