2.写経で心を整える
法相宗大本山 薬師寺
初心者から常連さんまで、誰もが静かに筆を動かす
730年の創建当初から唯一現存する国宝、東塔の大修理が2021年に完了した薬師寺。東塔以外の伽藍(建造物)は、長い歴史の中で、何度も火災や地震に見舞われ失われてきた。
そこで復興のために1968年から行われ続けているのが、「お写経勧進による白凰伽藍復興」だ。これは、薬師寺が伽藍を健立した白凰時代(645〜710年)の姿に復興するための浄財を、お写経を行うことで集めるもので、当時管主だった高田和上によって始められた。
この「お写経道場」では、まず丁子(クローブ)を含んで口を清め、首に輪袈裟を掛けて、床に置かれた香炉をまたいで身を清めてから席に着く。100席の広々とした道場内では、初めてお写経を体験する観光客から、毎日のように通い続けている常連の方まで、ずらりと同じ方向に並んだ机に向かい、静かに墨をすり、筆を動かす。般若心経の一文字一文字を丁寧に書き写すうちに、どんどん集中力が増していく。書き終えると、不思議と心が整い、すっきりした気分に。最後に願い事と名前を記入して、奉納。奉納したお写経は、お香で清められた後に、諸堂の納経蔵に永久保存される。所要時間は、1時間〜1時間30分。もちろん、お写経の前か後には、諸堂に祀られている薬師寺の御本尊、国宝の薬師三尊像の拝観を。やさしい表情をたたえた高さ254.7cmの堂々としたお姿に、健康と幸福を祈ろう。
お写経用の筆(800円)と墨(700円)は、売店で購入できる。
697年に開眼法要が行われたと考えられる薬師寺の御本尊。中央が薬師如来。向かって右が日光菩薩、左が月光菩薩。薬師如来の台座を含め、すべて国宝。
730年に建立された東塔(国宝)。2021年に約12年間かけて修復され、落慶記念として2024年1月15日(月)まで、西塔とともに初層が特別公開されている。
YAKUSHIJI
奈良県奈良市西ノ京町457
近鉄橿原線西ノ京駅から徒歩約1分
Tel. 0742-33-6001
拝観料:共通拝観券大人1600円(国宝東塔落慶記念 東塔・西塔特別公開含む)、通常拝観券大人1100円(2024年1月15日(月)まで)
〈お写経〉 8:30〜17:00
予約不要(7名以上の場合は予約を)
[休]無休
納経料:般若心経1巻2000円
https://yakushiji.or.jp