edit: Shiori Sekine, Yasuyuki Takase(EATer)

2020年代の見逃せない映画[見逃せない映画]

映画/ドラマ

 2020年代はコロナ禍の影響も大きく、映画館に足を運びにくい時期が続いた。けれど、この数年間に公開された映画の中にも、名作と呼ぶにふさわしい作品が数多くある。そこで映画を愛してやまない5人に、2020年以降に国内で公開された映画や、これから公開予定の映画の中から、“見逃せない”作品をリコメンドしてもらった。劇場の大きなスクリーンで、自宅でまったりと配信で、この年末年始は映画とともに過ごしてみよう。

*各映画について、この特集内では日本での公開年を記しています


映画監督から見た、2020年代の映画とは。

 価値観の移り変わりやコロナ禍を経て、2020年代の映画やその鑑賞環境にも、さまざまな変化を感じています。最近の映画を見て思うのは、時代を前進させようとしている作品が多いこと。人物像にしても人間関係にしても、これまでの属性を飛び越えて映し出すことに重きを置いた作品が印象的です。

 さらに、配信サービスが活発になったことで、映画をより身近に感じられる時代になりました。喜ばしいことである半面、つくり手としては映画の届け方を考えていかなければと課題に感じています。劇場ならではの鑑賞体験をしてもらえるように、画の迫力や音の臨場感にはもちろんこだわりたい。その一方で、家でも十分に楽しんでもらえる映画でなければならない、とも思います。

 私は、その人にしか撮れない世界観があって、映像を見ただけで誰の作品かがわかる映画に惹かれます。一つひとつのシーン、ロケ地、空間にある小道具、登場人物たちが着ている衣装まで、そのすべてに意味があると思っています。物語はもちろん、そんな工夫まで汲み取って映画を見ると楽しいし、つくり手としても気づいてもらえるとうれしい。時代の変化とともに、ますます良い作品が増えていくはず。細かな視点も自分で取り入れながら、これからの映画鑑賞を楽しんでみてください。

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映画監督
工藤梨穂さん
1995年生まれ。初長編作品『オーファンズ・ブルース』が第40回ぴあフィルムフェスティバルでグランプリ受賞。2022年に公開された『裸足で鳴らしてみせろ』も、第36回高崎映画祭などで受賞。今後の活躍に期待が高まる。


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©2022 VIPO

2022年公開

『遠くへいきたいわ』

*ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2021 完成作品

勤務先での出会いをきっかけに仲を深めた2人の女性が、いまは亡き家族を互いに重ねながら歩き出す。「洗練されたセリフの独特なリズムが素晴らしい。ラストシーン、自転車を用いた行為にここまで感動させられるとは思いませんでした。忘れられない作品です」(工藤さん)
Netflix(「若手映画作家育成プロジェクト」コレクション3内)にて配信中
監督:団塚唯我


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©2021 - AAMU FILM COMPANY, ACHTUNG PANDA!, AMRION PRODUCTION, CTB FILM PRODUCTION

2023年公開

『コンパートメントNo.6』

世界最北端の駅へと向かう寝台列車の6号室。女性が乗り合わせたのは、粗野なふるまいの男性。「旅路で仲を深める2人が、友情や愛情を超えた二人だけの関係を模索し、築いていくさまが魅力的です」(工藤さん)
U-NEXTほかにて配信中
監督:ユホ・クオスマネン


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©日本電波ニュース社

2022年公開

劇場版『荒野に希望の灯をともす』

アフガニスタンで人道支援を続けた医師・中村哲氏の姿を20年以上にわたり追ったドキュメンタリー。「そこに生きる人々に対する中村さんの愛と信念が刻まれていた。いまこそ多くの人に見てもらいたい1本です」(工藤さん)
随時、上映会を開催
監督:谷津賢二


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©2021 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF

2022年公開

『裸足で鳴らしてみせろ』

ある日出会った2人の青年は、目の不自由な養母の願いを叶えるために、“世界の音”を届けようと架空の世界旅行へと出かける。旅の途中で移りゆく2人の関係性と、世界旅行の果てに見た景色とは。衣装の色の変化にも注目。
順次、配信開始予定
監督:工藤梨穂



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