何度見ても胸が熱くなる〈アニメ映画〉。[見逃せない映画]

映画/ドラマ

 アニメ映画は、なぜか何度でも見たくなってしまう。多種多様な描き方に、独特な構図。監督の手によって、無限の世界を見せてくれるのがアニメーションなのだ。子供から大人まで楽しめるアニメ映画の魅力を、若林萌さんと有坂塁さんに教えてもらおう。


アニメ映画の可能性を広げる、
物語と表現に注目したい作品。

 「まずはストーリーに心惹かれた2作品です。『私ときどきレッサーパンダ』は、ピクサー映画の中でも大きな転換点となった作品だと思います。優秀な女性でいようと努めてきた教育熱心な母と、そこから逃れたい娘。社会の「こう生きなければならない」という重圧からの脱却を描きながらもコメディで、楽しく鑑賞できます。『犬王』は、亡き者にされてきた人々の声を拾い、無念を晴らすべく立ち上がる犬王と友魚の関係性にグッときます。社会に翻弄されつつも「他者と理解し合う事」を名前をめぐる思いや現代的なロックを用いて描く物語に脱帽です。

 次に挙げる2作品は、とくにアニメーション表現に感動した作品です。『ミューン 月の守護者の伝説』は、キャラクター造形と世界観の美しさが魅力。3D映画なのですが、キャラクターたちが見る夢の世界で2Dに切り替わることで、現実と夢の境界線を印象づけるなど、細かな描写も素晴らしい。なによりキャラクターがかわいいので、家族で楽しめる作品です。『マロナの幻想的な物語り』は、2DやCGなどの手法によって、人間社会に放り出されてしまったマロナが体験してきた感覚を表現している。行動や感情を比喩表現に置き換えられたり、自分とは異なる存在を通して世界を見ることができたりと、アニメーションならではの表現力が存分に発揮されています。

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アニメーション作家
若林萌さん

1992年生まれ。2022年に東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻を修了後、アニメーション作家に。さまざまなキャラクターたちが織りなす、おかしさと切なさが混在する不思議なアニメーションをつくり続けている。


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©2023 Disney/Pixar

2022年公開(配信)

『私ときどきレッサーパンダ』

両親の期待に応えるため、真面目に生きてきたメイ。ある日メイは、興奮するとレッサーパンダに変身する体になってしまう。思春期の変化や呪縛からの解放をコミカルに描き切った、ディズニー&ピクサー作品。
ディズニープラスにて配信中
監督:ドミー・シー


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©2021 “INU-OH” Film Partners

2022年公開

劇場アニメーション『犬王』

舞台は室町時代の京の都。猿楽の一座に生まれた犬王は、琵琶法師の少年・友魚と出会う。意気投合した二人は、互いの芸をかけ合わせた新しい猿楽で一世を風靡していく。
Amazonプライムにて配信中/Blu-ray&DVD販売中
販売元:アニプレックス
監督:湯浅政明


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©Onyx Films-OrangeStudio-Kinology

2022年公開

『ミューン 月の守護者の伝説』

昼と夜が同時に存在する世界で「月の守護者」に選ばれたミューン。苦難を乗り越え守護者となるまでの日々を描く。フランスでの公開から7年のときを経て、昨年ついに日本初上陸。 
Amazonプライムほかにて配信中
監督:アレクサンドル・ヘボヤン、ブノワ・フィリポン


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©Aparte Film, Sacrebleu Productions, Mind's Meet

2020年公開

『マロナの幻想的な物語り』

血統書つきの母と乱暴な父の間に生まれた、9匹きょうだいの末っ子にあたる小さな犬。生まれてすぐに家族から引き離され、さまざまな飼い主のもとで名前を授けられ、渡り歩きながら送る犬生を描く。
Amazonプライムにて配信中
監督:アンカ・ダミアン


世界中が注目した大作も、
余白を楽しむ日本の青春アニメも。

 「『マイ・エレメント』は、互いに打ち消し合う性質を持った火と水のラブストーリー。好きなのに触れられない。異なるエレメントとどう交流するか。それは現実世界での「他民族とどのように共存していくか?」というメッセージでもあり、つくり手の志の高さ感じられます。『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』は、前作を軽々と超えてきて驚きました。アニメーションなのに実写から始まり、アメコミ風に水彩画風と、画が次々に切り替わりそのすべてに意味がある。狂気すら感じる傑作です。

 この2作品と相反するのが『音楽』。実写映像をトレースして仕上げているため、画に躍動感があります。2作品に比べて、この『音楽』は良い意味で余白だらけ。間が独特で、ラストに向けての描き方も面白いです。

 実写ではできない表現の跳躍こそ、アニメーションの魅力。「ほかにはない世界をつくりたい」というつくり手の熱量がにじみ出ている作品は、見る者の人生にまで影響を与えてしまう力を持っている。そう信じています。

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「キノ・イグルー」主宰
有坂塁さん

2003年、渡辺順也さんとともに、全国のカフェや美術館などで上映イベントを行う移動映画館「キノ・イグルー」を始める。12月4日に、自身初となる著書『18歳までに子どもにみせたい映画100(KADOKAWA)』を発売した。
Instagram:@kinoiglu


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© 2023 Disney/Pixar

2023年公開

『マイ・エレメント』

火・水・土・風のエレメント(元素)たちが暮らす街。異なるエレメント同士の関わりが禁じられた世界で、火のエンバーと水のウェイドは出会う。2人の出会いは、この街にどんな化学変化を起こすのか。
ディズニープラスにて見放題独占配信中
監督:ピーター・ソーン


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©2023 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.
MARVEL and all related character names: ©&TM 2023 MARVEL

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2023年公開

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』

『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)の続編。マルチバースを自由に行き来できる世界で、自分に定められた運命を知った主人公が未来を変えるために戦う姿を描く。
Blu-ray&DVD発売中(ブルーレイ&DVDセット:5280円/4K ULTRA HD&ブルーレイセット:7480円)
監督:ホアキン・ドス・サントスほか


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©大橋裕之/ロックンロール・マウンテン/Tip Top

2020年公開

『音楽』

楽器未経験の不良高校生3人組が、ある日、思いつきでバンドを始める。彼らの奏でる音楽が、作品を超えて鑑賞者の心までも動かす。7年以上の制作期間を経て完成させた監督も含め、最高にロックな長編アニメーション。
Amazonプライムほかにて配信中
監督:岩井澤健治


12月22日(金) いよいよ公開!

『SPY×FAMILY』が映画館にやってくる。

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©2023「劇場版 SPY×FAMILY」製作委員会 ©遠藤達哉/集英社

 「少年ジャンプ+」の連載に始まり、TVアニメにミュージカルとその勢いはとどまるところを知らない『SPY×FAMILY』。ついに、本作史上初となる劇場版が、12月22日(金)に公開される。雪国・フリジス地方へ旅行にやってきたフォージャー家。旅の途中で起こったあるハプニングが、世界を揺るがす大事件につながってしまう。極秘ミッションを託された、偽装家族の運命はいかに。完全オリジナルストーリーで制作された興奮の1本を、ぜひ映画館で楽しもう。

『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』
原作:遠藤達哉(集英社「少年ジャンプ+」連載)
監修・キャラクターデザイン原案:遠藤達哉
声の出演:江口拓也、種﨑敦美、早見沙織、松田健一郎 監督:片桐崇 脚本:大河内一楼



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