photo: Shigeo Kosaka text: Keiko Ageishi edit: Kohei Nishihara, Shiori Sekine(EATer)

テストステロン食で若々しく健康に[テストステロンのおいしいレシピ]


 男性ホルモン「テストステロン」は、健康で活力あふれる生活を送るために重要なもの。11月19日は国際男性デー。この機会に、順天堂大学の堀江重郎先生に教えてもらいながら、テストステロンについておいしく学ぼう!


 「テストステロン」は男性のさまざまな機能に影響を与えるホルモンですが、単なる「男性ホルモン」ではありません。性別に関係なく人間がいきいきと能動的に生きるのに不可欠で、体だけではなく心も若々しくさせる働きがあります。血管を丈夫に保つ作用や脳の働きとも関連性があり、最近の研究では炎症を抑える作用などがあることもわかってきています。

 テストステロンは「社会性のホルモン」ともいえます。かつて狩猟採集生活をしていた時代、生きるために必要だった社会性や決断力、積極性とも関連し、テストステロンの分泌が十分であれば不安や恐怖など行動抑制に関わる感情が生まれにくいとされています。

 テストステロンの分泌量が減ると、男性は更年期障害を発症しやすくなります。男性の更年期障害は、女性のそれとは違って出口がなく、何も手を打たなければよくなりません。男性の更年期障害は現代における社会問題のひとつとも言え、正しい知識を持つことが大切です。男性はぜひ左のチェックリストを見てください。テストステロンの分泌量は、年齢よりも生活習慣などの影響が大きく、とくに自律神経が乱れる原因となるストレスは大敵です。できる限りストレスを避けて、運動・睡眠・食事などの生活習慣を見直すことが重要です。なかでも食生活の改善は、手軽にできる対策のひとつです。


《CHECK》
男性更年期障害チェックリスト

①性欲が低下した
②元気がなくなってきたような気がする
③体力、もしくは持続力が低下した
④身長が低くなった
⑤毎日の楽しみが減ったように感じる
⑥もの悲しい気分だ、あるいは怒りっぽい
⑦勃起力が弱くなった
⑧最近になり、運動能力が低下したように感じる
⑨夕食後にうたた寝することがある
⑩最近仕事がうまくいかない。仕事の能力が低下したように感じる

①と⑦の両方が当てはまる、または3つ以上の項目に該当する場合は、医療機関に相談を。

※順天堂大学大学院教授・堀江重郎先生の話から作成


CROSS TALK : 対談
テストステロン食で
若々しく健康に

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順天堂大学大学院教授
堀江重郎先生

順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科教授。医学博士。日米で医師免許を取得。日本初のメンズヘルス外来を開設。

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料理人
内田奈々さん

料理人。「ななかぐら」(神楽坂)店主。近著に堀江重郎先生との共著『若返りホルモン「テストステロン」を高める食生活』(さくら舎)がある。
 

「食」がテストステロン値を高めるキーワードに!

堀江:最近では、テストステロンの分泌の増減には腸内細菌が関わっていることがわかってきました。通常、人間の女性のテストステロン値は男性の10分の1で、ネズミにも同じように性差があります。そこで腸内細菌が存在しない環境でネズミの雄と雌のテストステロン値を調べて見ると、性差がなく同じ値になることがわかりました。つまり、多様な細菌と共存する環境ではテストステロンの分泌は活発になるけれど、腸内細菌がないとテストステロンは分泌されないということ。食によって多様な腸内細菌がいる環境を整えることが可能なのです。

内田:テストステロンの分泌量はストレスや加齢によって減少するのですが、現代社会では誰もが減っている可能性がありますよね。食の改善は、手軽にできるテストステロン増強対策といえそうです。

堀江:そうですね。テストステロン値の下降を抑え、上昇させるために欠かせない栄養素に、亜鉛やビタミンDなどが挙げられます。

内田:亜鉛は牡蠣や大豆、豚レバーや牛肉やスルメなどに含まれていますね。なかでもビタミンDが豊富な食材は鮭で、とくに皮の部分にたくさん含まれています。そのほか、テストステロンを分泌するのに必要な筋肉をつくるたんぱく質や、テストステロン分泌の指令を出す脳細胞を活性化させる作用が期待できる、魚脂に含まれるDHAやEPAも大切です。

堀江:えごま油やアマニ油に豊富に含まれるオメガ3脂肪酸(不飽和脂肪酸)など、良質な油をとることも重要です。戦後70年で平均寿命が延びてきた理由のひとつに、良質な油の摂取があります。「油断大敵」という言葉がありますが、健康を保つためにも油を断たないこと。ただし、揚げ油はすべて脂質になり、肥満や糖尿病につながるので注意が必要です。

内田:普段使う油をいい油に切り替えるのは大事ですね。私は良質なMCTオイル(中鎖脂肪酸)を毎日とっています。MCTオイルはほかの油と消化ルートが異なり、肝臓ですばやく分解されるのでエネルギー効率がすごくいい。酸化していない良質の油がたくさん含まれるナッツ類もいいですね。とくに、くるみはオメガ3系やオメガ9系の油が含まれているので、サラダなどに加えて食べるといいと思います。
 

栄養素だけではなく食べる環境も重要

堀江:テストステロン値を上げるためにもうひとつ大事にしたいのは食事環境。鍋料理やバーベキューで仕切る係になることで、テストステロンとともにオキシトシンの分泌も期待できます。

内田:集団で食事をして、食材が公平にいきわたるよう気配りするのがコツですね。日々つくる食事も心を込めて調理し、公平に配膳することでテストステロン値のアップにつながるかもしれません。無意識に行っている日々のルーティーンを意識することで、テストステロンの分泌を上げられることもありそうです。

堀江:テストステロン値が高まると、メンタル面にもいい影響を与えてくれるため、生き方そのものや人間関係も自然とよい方向にいくかもしれませんね。そのためにも、家族や仲間と鍋を囲んで楽しく食事をする機会を増やせるといいですね。

内田:今回ご紹介するスンドゥブチゲも、みんなで鍋を囲んで、楽しく食べていただきたいです!





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