仕事帰りに、日が短くなっていることを実感する9月は、秋の夜長を楽しむための音楽をご紹介します。
まずはアケボシのアルバム『Roundabout』。2008年公開の映画『ぐるりのこと。』の主題歌で日本映画の機微を見事にすくい上げた「Peruna」をはじめ、秋に似合う曲が多く収録されています。疾走感のある「Yellow Moon」の歌詞は、井上陽水との共作。インパクトのある言葉選びと、心地よい韻律には「陽水節」が光ります。日本語詞の妙をかみしめたくなる“月ソング”です。
お月見の季節になると、毎年ラジオから流れてくるトム・ウェイツの「Grapefruit Moon」。大橋トリオもカバーした名曲は、ぜひアルバムでも聴いてみてください。孤独で美しい曲たちに酔いしれたあと「Grapefruit Moon」~「Closing Time=閉店時間」で締めくくる構成が、名曲を見事に引き立てます。秋の晩酌タイムにじっくりと、いかがでしょう?
夏の疲れを睡眠で癒やしたい方におすすめなのが、ドイツの作曲家マックス・リヒターによる「寝落ちするための音楽」。眠っている間にも聴き続けてもらうため、曲の長さは8時間! それを起きている時にも聴けるようにと再編したのが、この『From Sleep』なのですが…。実際この原稿を書くために聴き始め、30分ほど経ったところで見事に寝落ちしてしまいました。ゆっくり反復されるピアノや、礼拝音楽のような曲を聴いていると、確かに呼吸も深くなっていく気がします。リラックス効果は実証済みですが、地下鉄の乗り過ごしにはご注意ください。
AKEBOSHI『Roundabout』
映画・CM音楽も手がけるシンガー・ソングライター明星嘉男によるソロ・プロジェクト。ケルトやカントリーなどのルーツ音楽とエレクトロが融合する。本作はセレクションアルバム

TOM WAITS『Closing Time』
ダミ声が特徴的なカリフォルニア出身のシンガー・ソングライター/俳優。本作がデビューアルバムだが、リリース時まだ23歳だったというから驚き。通称「酔いどれ吟遊詩人」

MAX RICHTER『From Sleep』
ドイツ出身、ポスト・クラシカルの作曲家。神経科学者の助言を経て作曲した睡眠のための音楽。こちらはCD化された1時間バージョン。8時間バージョンはダウンロードのみ
