読書の秋にちなんで、10月は「文学と音楽」がテーマです。先日ラジオに初挑戦した村上春樹さん。何を選曲するのか楽しみにしていたら、ブライアン・ウィルソンにビーチボーイズ!1970年を舞台にしたデビュー作『風の歌を聴け』が蘇りました。小説の主人公は「CaliforniaGirls」の入ったビーチボーイズのLPを返して欲しいと、女の子からラジオ経由で催促されるんですよね。音楽の鳴り止まない青春、羨ましい。タイムマシンが発明されたら、あの夏に行って、プール一杯分のビールを飲み、バーの床をピーナッツの殻で埋めつくすのが私の夢です。
村上さんもファンを公言するカート・ヴォネガットが引用されているのはイ・ランの『神様ごっこ』。このアルバムはCDと本がセットになっていて、彼女が執筆したエッセイの中に歌詞が埋め込まれているユニークな作品です。深刻な話をいつの間にか煙に巻いてしまうユーモアも、どこかヴォネガット的です。
作品に登場する音楽を聴いてみたい!そんな読者のニーズに応えてか、近頃は『蜜蜂と遠雷』や『羊と鋼の森』など人気小説のコンピレーションCDが発売されています。平野啓一郎『マチネの終わりに』の世界を再現したアルバムもその一つ。作中の音楽が実際に聴こえるというのは、ロケ地を訪れた時の衝撃にも似た刺激的な体験です。特に度々登場する「この素晴らしき世界」は、ストーリーが展開するたび聴こえ方が変わりました。作者の表現を借りるならば、「文学は常に音楽の印象を変えている」のかもしれませんね。
The Beach Boys『Summer Days』
小説『風の歌を聴け』の主人公「僕」が返しそびれていたレコードはおそらくこれ。次作『Pet Sounds』で芸術性の高い作風に舵を切る直前のビーチボーイズが垣間見られるアルバム
ユニバーサルミュージック 1965
イ・ラン『神様ごっこ』
シンガーソングライター/作家/映像作家/イラストレーターなど多彩な活動を展開する韓国人女性。来日公演は10/13渋谷WWW、11/2〜3掛川市FESTIVAL de FRUE 2018
スウィート・ドリームス・プレス 2016
福田進一『マチネの終わりに』
小説『マチネの終わりに』に登場する曲をクラシックギター奏者の福田進一が再現。『ガリレオ』シリーズの西谷弘が監督、福山雅治&石田ゆり子という最強のキャスティングで来秋映画化
コロムビア 2016