2020年を始めるエレクトロニカ《音楽日々帖》


 ついに2020年、新たな10年が始まりますね。“2020”を合言葉にしてきたことがあまりに多くて、ついにその時がやってくる!という興奮と、次の10年いったい私たちはどこに向かうんだろう?という一抹の不安。フローティング・ポインツの『Crush』は、そんな気持ちにジャストフィットな作品です。弾ける雫のような電子音に、緊張感を煽るビートやストリングス。昨今の地球破壊や政治混乱に対するサム・シェパードの思いが制作のモチベーションになったという本作は、スリリング、かつエキサイティング。まさに「今」のエレクトロニカ・アルバムです。

 私が知るなかで一番お正月っぽいと思うアルバムジャケットは、ティコの『Epoch』です。日本人の目には、どこからどう見ても富士山と初日の出!実際のところ、オープニング曲の「Glider」で晴れやかに飛び立ち、眼下に絶景広がる「Horizon」、そして最終曲「Field」に着地という流れを考えると、この富士山は地平線に続く滑走路なのかもしれません(笑)。ダイナミックな高揚感をまとったサウンドは、特別な1年の始まりに最高です。

 よき旅立ちを予感させるもう1枚は、フライト・ファシリティーズの『Down To Earth』。「シートベルトを緩めて、なるべく動き回ってね」という離陸アナウンスを模したナレーションがなんともユーモラス。全体的にクールさを保ちつつも、R&Bやハウス、HIP HOPなどバラエティに富んだ曲の数々が、じわじわと気分を盛り上げます。2020年があなたにとって心躍る1年となりますように!

 

Floating Points『Crush』

 マンチェスター生まれ、現在はロンドンを拠点に作曲家、プロデューサー、DJとして活動するサム・シェパードのプロジェクト。神経科学の博士号を持っているという知的な一面も

metro205_ongakumetro205__B1_3134影.jpgNinja Tune 2019


Tycho『Epoch 』

 サンフランシスコを拠点に活動するスコット・ハンセンのソロプロジェクト。グラミー賞は2作連続ノミネート。バンド体制でエレクトロニカを進化させる3部作の最終章

metro205_ongakumetro205__B1_3129影.jpgGHOIN 2017


Flight Facilities『Down To Earth 』

 2009年にオーストラリア・シドニーにて音楽プロデューサーのヒューゴとジェームズで結成したエレクトロニック・デュオ。日本盤ジャケットには東京タワーを見下ろす夜景が!
metro205_ongakumetro205__B1_3128.jpgHostess Entertainment 2015





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