断捨離の過程と、ミニマルな部屋《音楽日々帖》


 雨の季節、到来。おうちで過ごす時間が増えるのならば、居心地を良くしたい!そんな断捨離スイッチが入ったあなたに贈る音楽3選です。

 Macでalt+jと打つで表示される△に由来するバンド名や、統制の取れたその音楽からも、「彼らのデスクトップは整然としているに違いない」と思わせるアルト・ジェイ。最新作『The Dream』には、暗号通貨で億万長者になる子供や、ハリウッドの密売人など、倫理観を揺さぶるストーリーがちりばめられています。自由な夢想から生まれたひと癖もふた癖もある曲たちが、アルバム1枚に難なく収まっている妙に、今回もアルト・ジェイの規律を感じずにはいられません。

 流行が変わろうが好きなものは好き。好きなら埃を被ったままにせず、いまっぽく使いたい。ニルファー・ヤンヤの『Painless』を聴いていると、そんな気分にさせられます。真ん中に据えられているのは、ニルヴァーナ、レディオヘッド、ザ・ストロークスなどを思い起こさせる、「私のCD棚ですか?(by ロック世代)」な懐かしいギターサウンド。でも音数の少なさやプログラミング感覚は確実にジ・エックス・エックス以降の音で、2022年上半期マストチェックな1枚です。 

 所有物を極限までミニマライズできたら、その部屋をどんな音で満たしたいですか? 原美術館で流すための音源から生まれたという吉村弘の『MUSIC FOR NINE POST CARDS』は、シンセサイザーの音の粒が空間に溶けゆく瞑想的アンビエントミュージック。40年の時の流れにも耐えるミニマルの境地、ここにありです。

ALT-J『The Dream』

 マーキュリー・プライズ受賞のデビュー作『An Awesome Wave』から10年。折り目正しきアートロック・バンドの夢想がオーケストラやオペラ風味とともに結実した4作目

metro232_metroradio_1.jpgBMG/ADA 2022

NILUFER YANYA『Painless』

 ロンドン出身。憂いのあるボーカルが魅力的なシンガーソングライターの2ndアルバム。ライブはサックスが入る編成で、曲もカバーしているPJハーヴェイっぽさを感じました

metro232_metroradio_2.jpgATO RECORDS 2022

吉村弘『MUSIC FOR NINE POST CARDS』

 サウンドインスタレーションや公共空間の音デザインでも活躍し、近年国内外で再評価の只中にいるジャパニーズアンビエント界の先駆者。1982年のデビュー作

metro232_metroradio_3.jpg
Sound Process 1982





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