ジュアン・ミロの作品など約130点が集まる、大規模展覧会が開催!
音声ナビゲーターを務める杉野遥亮に、その作品の魅力について話を聞いた。
自由を体現する。
その姿に共感しました。
日本を夢見たスペインの芸術家
1893年にスペインのバルセロナに生を受けた、20世紀を代表するシュルレアリズムの巨匠、ジュアン・ミロ。彼が生まれた当時、ヨーロッパでは、浮世絵や着物といったジャポニスム(日本趣味)が大流行。当時の芸術家たちに大きな影響を与えたが、ミロ自身も日本文化に関心を持っていたことが、さまざまな作品から見てとることができる。
ミロと日本。そのつながりを、約130点の作品と資料を辿りながら見ることができる展覧会が2月11日からはじまる。展覧会は、ミロが晩年を過ごした、マジョルカ島にあるミロ財団がバックアップ。実に20年ぶりに国内での大規模なミロ展が実現した。
音声ガイドを務めるのは、俳優の杉野遥亮。約2年前、彼はTV番組の仕事で、バルセロナに一週間ほど暮らしていた。はじめてこの地に降り立った瞬間のことは、いまでも覚えているという。
「飛行機を降りた瞬間に、甘い香りがしたんです。とても楽しくて、ワクワクするような土地の匂いに、一瞬でバルセロナのことが好きになりました。明るい人が多く、年齢性別問わずみんな心が解放されているというか、日本にはない自由な雰囲気がこの街にはあるなと感じました」
ミロは、多くの作品を残した。絵画、彫刻、版画に陶芸、詩、書のような作品もある。ジャンルに縛られず、既成概念に囚われない作風は、まさに杉野がバルセロナで感じた“自由”という言葉こそがふさわしい。
「ミロの作品を見て感じたのは、しっかりとした自分の軸があるということ。誰がなんと言おうと、興味があるもの、好きなもの、自分の感覚に忠実な人だったんだろうなと思います。自分自身に正直であり、ありのままに生きている。だからこんな作品が描けたはずです。僕自身、いまは感覚で表現することを大事にしているので、彼の姿勢にとても共感し感銘を受けました。もしミロが、現代の日本にいたら人としてきっと好きになっていたと思います」
そんな杉野に、今回の展示作品のなかでいちばん好きな作品を尋ねると、《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》をあげてくれた。
「見たときに、どこか落ち着く感じがしました。それであとから知ったんですが、この作品は、ミロ自身が感じた癒やしをモチーフにしたものだったんです。ミロと僕の接点を感じましたね。でも、どの作品も好きです。だって、すべてに嘘がないですから」
日本に憧れを抱いていたミロは、1966年に念願の初来日を果たした。そこで出会った日本人とは、帰国後も親交を深め、後年にはその友情からさまざまなコラボレーションも生まれた。もしミロが現代の日本を訪れたら、杉野との時空を超えた交歓がなにを生み出すのか…作品を前にそんな想像をするだけでも楽しめそうだ。
PROFILE
TBSテレビドラマ「妻、小学生になる。」に出演中。Amazon Prime Video「僕の姉ちゃん」が配信中。2022年の出演待機作に、映画「やがて海へと届く」などがある。
背景にコラージュされた浮世絵、書のような文字、やきもの…
日本とミロには深いつながりがあった
ジュアン・ミロ(1893-1983)
1893年、スペインのカタルーニャ地方の都市バルセロナ生まれ。美術学校で学んだミロは、同じカタルーニャの小さな村モンロッチとバルセロナを行き来しながら画家としての人生を歩み始め、幼い頃から中世のフレスコ画やガウディの建築に触れてその大胆な形と色に魅了された。故郷の風土に根ざした生命力溢れる作品を制作する一方で、1920年からはパリに出て詩人アンドレ・ブルトンと親交を結び、シュルレアリスムの運動に参加。大戦中は戦禍を避けて各地を転々としながら制作を続け、画材の入手もままならない状況に置かれたが、1944年に陶芸と彫刻の制作をはじめ、素朴な自然の素材に触れることで活力を得ていく。1956年、マジョルカ島パルマにアトリエを構え、彫刻、陶芸、壁画、版画、詩と多彩な芸術活動を行ったミロは1983年に90歳で没する。
© Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
ジュアン・ミロ 《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》
1945年 油彩、キャンバス 福岡市美術館
© The Museum of Modern Art, New York. Florene May Schoenborn Bequest, 1996 / Licensed by Art Resource, NY
© Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
ジュアン・ミロ 《アンリク・クリストフル・リカルの肖像》
1917年 油彩・コラージュ、キャンバス ニューヨーク近代美術館
Photographic Archives Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia, Madrid
© Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
ジュアン・ミロ《絵画(カタツムリ、女、花、星)》
1934年 油彩、キャンバス 国立ソフィア王妃芸術センター
© Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
ジュゼップ・リュレンス・イ・アルティガス、ジュアン・ミロ 《花瓶》
1946年 炻器 個人蔵
Fundació Pilar i Joan Miró a Mallorca Photographic Archive
© Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
ジュアン・ミロ 《絵画》
1966年 油彩・アクリル・木炭、キャンバス
ピラール&ジュアン・ミロ財団、マジョルカ
INFORMATION
ミロ展─日本を夢みて
[会場] Bunkamura ザ・ミュージアム
[会期] 2月11日(金・祝)〜4月17日(日) ※2月15日(火)、3月22日(火)は休館
[当日券] 一般1800円、大学生・高校生1000円、中学・小学生700円
※会期中すべての土日祝および4月11日(月)~4月17日(日)は、事前に【オンラインによる入場日時予約】が必要。また、会期・開催時間などは変更の可能性もあり。最新情報は、展覧会オフィシャルHPへ
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_miro/